異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第18節

 職人の手配はロージーの手腕のおかげで整った。急遽という事もあり、多少の賃増しこそあったものの、バスを満員にできる程度には揃った。
 明日の朝には出立の準備が整うという話なので、今日は宿をとって一泊し、翌日には出発する。
 そして次の課題は資材の調達だ。
 街の発展にはまず食料とインフラが欠かせない。
 どちらも現代で調達できるが、国内の生産力を上げるために可能な限り地産地消をしたい。そのためには少しぐらい多めの出費にも目を瞑ろう。
 幸いにも俺の領地には川や山林があり、その周辺には農村や山村もあるため食糧や木材の調達には事欠かないと思っている。それでも足りない時は森の国に資材調達するしかない。


 宿を取って一室にI.Gを仕掛け、各村でどれだけ資材が調達できそうか視察をするのもいいだろう。このまま時間を潰すのも勿体無い。
 誰かを誘おうかとも思ったが、杖での移動は意外に堪える。一人で行こうかと思った矢先、水城が俺の前に現れた。


「あれ? またどこか行くの?」


「ああ。職人の手配ができたみたいだから、資材の調達のために村々を回ろうかと」


「なら、私も行っていいかな?」


「水城もか?」


「うん。一樹が空飛んでるの見て、私も飛んでみたいなって思って」


「……まぁいいか。お前なら、能力でいつでも移動できるしな」


 俺は杖に跨り、その後ろに水城を乗らせる。


「落ちないように気を付けろよ」


「あんまり乱暴な運転しないでよ」


「分かってるって」


 俺はそのまま上昇し、鉱山都市ヒルを見下ろす高度まで到達する。


「行くぞ?」


「いいわよ」


 水城の返事を聞いてから杖の速度を徐々に上げ、空気抵抗が大きくなったところで風の魔術で抵抗を減らす。これだけのスピードの中、抵抗なく走れるのは快適だ。


「一樹の魔術って本当に便利よね」


「まぁね。こっちの世界じゃ当たり前だけど」


「でも、あんまり魔術を使ってる人っていないわよね?」


「魔術を使うには魔力を消費するからな。魔力を回復するにはそれなりに時間がかかるから、あんまり多用しすぎるといざって時に使えないからってことらしい」


「でも、一樹は使ってるわよね?」


「魔力は自分の魔力の他に魔石の魔力を使うって手段もあるからな。俺の場合、カオスのおかげで魔石の魔力をそのまま体内に取り込むことができるけど」


「あの宝石の事でしょう? あれってそれなりに高価な物じゃないの?」


「どうなんだろう。この世界で言えば、平均の日給が一万円だとしたら、安い魔石一個で四千円ぐらいだからな」


「そんなもんなんだ。魔石ってやっぱり鉱山から採掘したりするの?」


「いや、基本は魔族を倒したら手に入る。ゲームで言う所のドロップ品みたいな感じだ」


「魔族?」


「そう。まぁ俺達現代人の価値観で言えば、ゲームに出てくるモンスターの事だよ」


「でも、ここはゲームの世界じゃないでしょ? この世界の人達みたいに魔族も家族とかいたりしないのかな?」


「どうなんだろう。クララ、起きてるか?」


「魔族に家族がいるのかって話?」


「そうだ。魔族に家族は居るのか?」


「人間みたいに血の繋がりはないけど、一緒に暮らすって意味での家族はいるわよ」


「そうなのか?」


「全員がってわけじゃないけどね。魔族は人間と違って魔力さえあれば単独でも生きていけるから、人間ほどに繋がりは重視しないの」


「そうなのか」


「でも、中には変わった個体もいるわ。魔族同士のつながりじゃなくて、人と繋がろうとする個体とかね」


「やっぱりいるのか?」


「ええ。誰に命令されたわけでもないのに自然と人に混じろうとする個体。中には冒険者になって同族を殺して生計を立てるような個体もね」


「魔人は魔獣を使役できるんだろう? だとしたら、簡単に勝てるな」


「そうだけど、そんな姿を見られたら魔人だって一発で分かるわ。上手く隠れている魔人は本当に分からないわ」


「それもそうか」


「一樹、ちょっと待って。さっきから話を聞いてたら、その魔人ってまるで人間みたいじゃない?」


「まぁ見た目も中身も人間そっくりだよ」


 レオ達と一緒に進軍する魔人達の中に切り込んだ時に人の姿をしていた奴らも居た。


「一樹はその人たちを殺したの?」


「結果的にはそうなるな」


「それはアマテラスに入る前?」


「ああ」


「そう……」


 何故か水城は消沈した様子だった。

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