異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第16節

 山の国は陽の国の東北に位置し、連なる山脈の中腹に鉱山都市ヒルがある。
 主な資源は当たり前だが鉱物であり、それらを加工した武具の類が特産品にもなっているため、この国の産業形態は第一次産業と第二次産業が主である。
 山から取れる鉱物は現代では有り得ないような分布をしており、金、銀、銅、鉄が一つの山から採れ、たまに魔力を蓄えた自然な魔石も存在する。そういった自然発生する魔石は純魔石と呼ばれ、魔石術の観点から見れば蓄えられた魔力は非常に分解しやすく、効率よく魔術を発生できるらしい。そのため非常に高価であるらしい。


 山の国も陽の国と同様王国であり、ヒル王家が治めている。以前、爵位授与式で出会ったイオネ・ヒルもそのヒル王家の姫だ。
 山の国は主にシーク人が多く住み、ヒル王家も全員が純血のシーク人らしい。
 そしてそのほとんどが職人の家系であり、一子相伝の技を持っている。彼らは山の国内で技を磨くか、外に出稼ぎをすることが多いらしい。サニングに滞在していたシーク人の職人はこれに当てはまる。


 そんなシーク人達の国に向かっているわけだが、馬車では辛い登り道もすいすいとバスは進んだ。たまにすれ違う商人の驚いた顔を思い出すと笑いがこみ上げてくる。
 坂を登り続け、標高が五百を超えたぐらいでやっと街にたどり着く。
 入国の申請をしようとすると、守衛達にものすごく警戒をされた。しかし、オルコット商会の影響力はこの山国にも届いているようで、セシルの名前を使わせてもらったら一時入国を認められた。ただし、バスでの入国は認められず、仕方がなくハリソンとアンバーを外で待たせることにした。


 鉱山都市ヒルは石造りの建物が多く、大通りは全て石畳になっている。職人の技が光る綺麗な石畳だ。
 セシルの案内で山の国で最も影響力を持つ商会、ダンカン商会に向かった。
 ダンカン商会は大通りに面した一画を敷地としており、オルコット商会ほどではないが、それでも広く大きい構えをしている。
 中に入り受付で商会長との面会を求め、忙しからと代理の者が相手をしてくれることになった。
 その人物にチャドの紹介状を渡すと、少しだけ驚いて俺に何人か職人を用意する事は可能だと言ってくれた。
 そこから先は商談だが、あとはロージーに任せた。人を雇うための相場なんてわからないが、金に糸目は付けない。公爵となったことによって年金は発生するし、税収もある。その税収を使って和の国を発展させようというのだから、ある意味での公共事業だ。
 ロージーの交渉が終わるまで外で休もうかと思ったところに見知った顔が扉をくぐった。
 イオネ・ヒル。山の国のお姫様だ。

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