異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第15節

 サニングを発ち、俺達はハリソンの運転するバスに揺られながら交易路を進む。窓から見える景色はあっという間に流れる。


「これがカズキさんの国の乗り物なんですか……」


 セシルはバスの車内を見渡してはこれは何だ。あれは何だと赤ん坊が母親に質問するが如く、尽きない好奇心に動かされているようだ。
 初めの十何個ぐらいまでは真面目に答えていたが、それ以上になるとさすがに疲れてきて適当に相討ちをするだけになった。
 ここからヒノモトまでは概算で約二時間。
 舗装されておらず、信号も無く、行き交う車もないただただ真っ直ぐな一本道。馬車では絶対に出せないスピードで駆け抜ける。


「水城! 燃料はまだ大丈夫か?」


「えーっと……大丈夫! まだ半分ぐらいはある!」


 大型バスなだけあり、給油タンクは大きく、消費も激しいため燃料の確認は欠かせない。
 そうして約二時間を揺られれば再びヒノモトに辿り着く。
 道中、宿場町もあったが休憩無しに飛ばした。途中、ハリソンと水城が交代で運転したため、全くの休憩無しという訳でもない。
 そのままバスでオセロ子爵の屋敷に向かい、空いたスペースにバスを置かせてもらう。


「これがカンザキ公の故郷の乗り物ですか」


 オセロ子爵はわざわざ屋敷から出てきてバスを見に来た。


「これは俺の国でバスって呼ばれるものでして、ここら辺では乗り合い馬車のように巡回して人を運ぶ物ですね」


「だからこんなにも大きいのですか」


「五十人ぐらいは乗れるかな」


「五十人ですか……馬車の定員とはまるで違う」


 その後はオセロがバスに乗りたいと言い出したので、実際に乗らせてみた。代わりに俺達はオセロの屋敷に泊まらせてもらう。
 夕食の席では


「今日はここで一泊して、明日は山の国に向かうつもりです」


「そうでしたか。ではシーク人が好む酒をいくらか都合いたしましょう」


 と気まで回してもらった。こっちの世界の酒はかなり癖が強いため俺の好みではないが、この癖こそがシーク人が好む理由だと言われればそういうものかとしか言えない。
 やはり、世界が変われば味覚も変わるのだろう。


 そして夜を明かして早朝。
 オセロから受け取った酒類を積みこんで山の国に出発した。ここから更に三時間コース。しかも途中からは登り道である。軽油が持つかは微妙だが、持つだろうと高をくくって出発した。
 ドライブメンバーは俺、アイリス、ハリソン、ロージー、ジェイド、アンバー、セシル、水城だ。これだけ乗ってもまだまだ座席に余裕はある。帰りにはこの空席が埋まるだけの職人を連れて帰りたい。

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