異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第9節

 俺達は屋敷に招かれ、貴賓室に通される。
 悪くない質の椅子に腰かけてしばらく待つと中年のおっさんが部屋に入ってきた。
 父親から家督を継いで子爵となった息子というイメージから、もっと坊ちゃんかと思ったらかなりの年輩で驚いた。


「初めまして、オセロ子爵。私はカンザキ・カズキと申します」


「正式に挨拶をするのはこれが初めてですな。カンザキ公。私はこの街を管理しておりますオセロ・ホプキンスと申します」


 俺の事を公爵だと知っていた風だ。


「カズキ。この人、授爵式の時に参列していた人よ。面会の時はハリソンが相手をしていたはずよ」


 ああなるほど。だからオセロ子爵は俺が公爵だと知っていたのか。


「これは失礼しましたオセロ子爵」


 俺はオセロに手を差出し、オセロはその手を握り返した。
 そして気が付いたが、オセロの後ろに女中以外にも誰かが立っていた。服装からして他の女中という訳でもなさそうだ。


「おっと、紹介が遅れました。私の妻のマージョリーです」


 オセロの妻らしいマージョリーという女性。年齢はかなり離れているようでオセロが四十代後半ぐらいに対してマージョリーは二十代半ば、俺とあまり歳は変わらないぐらいだ。


「初めまして、カンザキ公爵。オセロ様の妻のマージョリーと申します」


 なんだ? なんか違和感があったような?


「初めまして。マージョリーさん」


 とりあえず会釈だけして済ます。


「今、召使いたちにお茶を用意させております。ご用件はその席でお伺いしますがよろしいでしょうか?」


「お気遣い痛み入ります」


「では、こちらへ」


 俺はオセロに連れられ貴賓室よりも更に広い部屋へととおされる。さっきの貴賓室も悪くない椅子を使っていたが、こっちの椅子はそれよりも座り心地が良い。それに部屋の内装もそれなりに金をかけていることが分かる。


「まずはお座りください」


 俺とオセロが対面しての上座。それぞれの隣にアイリとマージョリーが座る。
 そして女中が用意してくれたお茶をそれぞれの目の前に置かれ、俺はそれを頂く。


「さて、本日のご用件はなんでしょうか?」


 オセロはリラックスした雰囲気で質問をしてきた。


「私が公爵となり、この一帯の領主となったことはご存知ですよね?」


「はい。私もあの場できちんと耳にしました。カンザキ公が陽の国の東部であるこの一帯の領主となり、自治権を授かっていることを」


 つまり、今までは『王族』の下に付いていた『オセロ』が土地を管理していた。だが、この土地が俺の物になった以上は『俺』の下に『オセロ』がいることになる。
 『俺』が『オセロ』に土地の管理を任せないと言えばその通りになる。


 ここらへんが難しいが俺は確かにこの土地を手に入れたし、運営も自由にできる。しかし、その土地に住んでいる人間は少し前まで陽の国の住人。もしかしたら、今でも陽の国の住人かもしれない。
 この世界における領主の交代や土地の割譲や自治権の認可、小国の設立等の当たり前が分からないし、現代での当たり前も分からない。
 ただ、ここで選択を間違えれば住民に禍根を残したり摩擦や軋轢を生む可能性もある。人の気持ちはスイッチのように簡単に切り替わるものでもないし、変化を嫌う人間も少なくないだろうから。
 それと、俺はこの一帯の領主になったが全ての管理を俺一人でするわけにもいかないし、ハリソン達に丸投げするには広すぎる。
 ならば、既にその土地の管理人であるオセロが有能であるならば、そのまま俺の指示に従ってくれるのが理想だ。


「正直に言いますと、私はこの土地を授かり自治権を認められた身です。なのでここに独立国家、和の国を建国し、そしてその首都をこの街、ルクスにしようと思っています」


「……この街が首都ですか?」


「はい。和の国で言う所のルクスは陽の国で言う所のサニングに相当するということです」


「この街が……首都に……」

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