異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第8節

 アイリに指示を出しながら適当にこの街の情報を集めてみると、どうやらこの街はルクスという名前らしい。
 ルクスはこれといった特徴はないが、その立地の良さから行商人や旅人が多く、それなりに活気はある。ただし、特に努力もせずとも客が訪れる事から他の街と比べ税率が高く、この街を収めている子爵はあまり評判が良くないとの事。
 元々、その子爵は父親から爵位を譲り受け、その後は王族の命によってこの土地の管理をしていたに過ぎない。歴史の勉強で出た単語を借りるなら地主と小作人の関係だ。土地は王族、管理は子爵。子爵は街を運営しながら税を徴収し、王族にその一部を払う。そんな構造らしい。
 噂話によるとその子爵より上の爵位を持つ領主が新しく来るとのこと。それが俺だというのはあえて言わなかったが。
 それらの情報から推測するにこの街の管理をしている子爵は民からあまり好かれておらず、本人の能力もあまり高いとは言えないといった感じだろう。
 更に言えば、今までは自由に街を管理していた所に俺みたいな新しい人間が来るのはあまり歓迎されないだろう。


「どっちにしても行ってみるしかないか」


 子爵が住む屋敷はこの街中にあり、肩書き上は俺の方が位が高い。アポ無しだが、無碍に扱われることもないだろう。
 アイリを連れてその子爵がいるという屋敷を訪れた。
 屋敷は俺が使っている屋敷とあまり変わらない。強いてあげれば装飾品がやや多い気がする。
 門は閉じられており、その前に門兵がいる。
 俺が門兵に話しかけ、自分が公爵であると自己紹介をすると初めは疑いの眼差しを向けられた。しかし、身分証明のために持ってきていた書状、爵位の授与式の時に渡された書状を見せると門兵の態度がたちまち変わり、門を開いてくれた。
 例の子爵が会ってくれるかどうかは分からないが、自分が追い返すと問題になりかねないから中の人間に訊いてくれということらしい。
 それならばと門兵に礼を言って中に入り、屋敷に向かおうとするとこちらに気が付いた女性が声を掛けてきた。


「すみません、お客様。今日はお客様がいらっしゃると伺っていないのですが、オセロ子爵様にご用件でしょうか?」


「ああ、俺はカンザキ・カズキ。最近公爵になって、ここら一体の管理を任された人間で、そのオセロ子爵にちょっとご挨拶をと思いまして」


 そう言って俺には何が書いてあるのか分からない書状をこの女中に見せる。


「これは失礼しました! 今すぐご案内いたします!」


 女中は急に態度を改め、俺達を屋敷へ案内してくれた。

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