異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第5節

「……ポーちゃんを俺の家にですか?」


「ええ。部屋が狭いというのなら心配しないで。こちらで新居をご用意いたします」


「…………」


 部屋を新しく借りるか……。
 ポーちゃんと二人でワンルームは確かに辛い。精神的にも物理的にも。


「分かりました」


「ありがとう。では早速だけれど、これが新居の鍵。これが地図ね」


 差し出された金属片と紙切れとアイエフが言うシンキョノカギとチズが同一の物だということが一瞬、掴みきれなかった。それほどまでに早速過ぎる。


「これ、この近くですよね」


「ええ。今までより事務所にもココにも近いわよ。まぁ黒の剣士さんには距離なんて関係ないと聞いてますけどね」


「…………」


 俺の能力とその応用ぐらいは既に知られている。
 仕事が早いのはいいことだが、それを別の所に使ってほしい。


「この鍵はポーちゃんに渡しておくから、これを部屋のどこかに置いておいて。折り目は付けずに」


 I.G用のイラストをポーちゃんに渡す。これで必要があれば新居に向かうことができるだろう。


「ところで、引っ越しとかもそっちでしてもらえるんですか?」


「ええ。黒の剣士さんから許可さえもらえればこちらで全て済ませてしまうわ。確か向こうの世界でも住む場所はあるのよね?」


「まぁありますけど」


「どうしても引っ越しってなると一日掛かってしまうわ。今から手配したとして、明日の晩までかかるから、申し訳ないけれど明日まではあちらの世界で泊まってくれないかしら?」


「それなら仕方がないですね」


 基本的に寝食は向こうの世界で済ませるようにしている。その点に関しては何も問題はない。


「では、こちらからの話は以上です。以降は黒の剣士さんの指示に従って私とポーちゃんは動きます。まずは何をすればよろしいでしょうか?」


「なら、まずはこれを換金してくれ」


 何をするにしてもまずは資金だ。アマテラスに加入した俺が求める見返りは物資の調達を効率的に行えることにある。そして、換金時の不安を払拭することにもある。
 魔力の一切を宿していない魔石を再構築し、具現化する。
 魔力が尽き、死にかけた所から十分に魔力を回復するまでに費やした魔石は膨大だ。それを全て換金すれば、それなりの額が手に入るだろう。一部は向こうの世界で加工済みの代物もある。


「畏まりました」


「ポーちゃん、商談をする上で能力の使用は認めるから、頑張って」


「……分かりました」


「資金が集まったら、色々と買ってきて欲しい物がある」


 俺は手早くリストを作り、それをポーちゃんに渡す。


「それじゃあ俺はこのバスをあっちの世界に持っていくから」


 俺は早速、バスにI.Gを仕掛けてからバスに乗り込んで運転を始める。思ったより運転席は狭く、よく分からない計器やら無数のボタンがあったりと分かりにくいが、アクセルとブレーキ、サイドブレーキとクラッチさえ扱えばなんとなく操作はできる。
 バスの燃料は軽油であり、メーターは満タンを指している。
 軽くアクセルを踏み込み、いざ異世界へ。

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