異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第91節

「大地よ!!」


 この場は採石場。土属性で操れぬ物はない。
 大地を隆起させ、大蛇をかたどり、操る。大地から生えたその丈は三十メートルを超え、開いた口は五メートルを超える。


「そんな技も使えるのか」


「自称、黒髪の魔剣士だ。剣と魔術の両方を操る」


「剣の腕はイマイチそうだがな」


「ほっとけ」


 大蛇がヘラに攻撃を仕掛けるがヘラは余裕を持って回避し、逆に大蛇へ蹴りを放つ。だが、ヘラの攻撃は大蛇に通用しない。それどころか逆にヘラの足が折れる。
 要はファットとククの模擬戦の時と同じだ。身体強化系能力者はこういった巨大な敵を相手にするのに向いていない。そもそも巨大な敵を相手にするという時点で有効な攻撃手段は限られる。 
 あの時のファットはゴリファントが生物であることから執拗に足を狙い倒した。それに対し、俺が生み出した岩の大蛇は弱点が無い。周囲に岩は豊富。魔力が尽きない限り無限に再生し続ける。
 ……その魔力の底が見え始めてるから辛いんだが。


「さすがにこいつは厄介だな」


 奴の身体は再生力こそ桁外れに高いが耐久力はない。自身の攻撃による反動で崩壊する程度だ。


「こういう奴を相手にするにはアレしかないか」


 再び大蛇をヘラにけしかけ、その体を丸呑みにしようとする。


「スー……ッ! ハァッ!!」


 僅かに深呼吸をした直後、丸呑みにされる直前、冗談ともいえる事が起きた。
 蛙パンチ。
 ヘラはその場に屈み、垂直に跳躍し、振り上げた拳で大蛇の上顎を破砕した。
 さっきまでのヘラの耐久力では岩を砕く所か自分の腕が砕かれていただろう。まるで能力が変質したような……いや、上位能力か。


「それがあんたの上位能力か……」


 上顎が砕かれた大蛇を再生する僅かな時間稼ぎ。


「ああ、今までが傷付いてもいい身体なら、今は傷つかない身体だな」


 大蛇の上で腕組みをし、俺を見下ろすヘラ。
 上位能力についてはあまり良く知らないが、簡単に言えば能力の上位互換みたいなものだと思う。だから、今まで奴から得た能力に関する情報も通用するかどうか怪しくなった。というより、傷つかない身体というのが分からない。
 文字通りの意味だとすれば、俗にいう無敵だ。
 ……どうする? このまま大蛇で戦うか?
 魔術で生み出した大蛇での攻撃で返り討ちに合ったという事は能力の理と魔術の理の違いを利用した攻撃はできない。さっきの一連のやり取りを見ても大蛇を再生する魔術に費やす魔力の量は釣り合いが取れない。
 ……これならまだ俺自身が戦った方がいいか?


 再生途中の大蛇を崩し、再び剣を構える。


「何だ? もうおしまいか?」


「……ああ。どうやらあんたには効かないようだからな」


 あの身体強化の一種、言うなれば硬質化は岩を砕くのに十分な程の強度を保てるという事だ。どれほどの強度があるのか確かめなければならない。
 身体強化から左右にステップを織り交ぜながら距離を詰め、魔剣カオスを振るい、ヘラはそれを腕で受け止め、腕を斬り飛ばされる。


「……硬質化しねぇのかよ」


「お前には必要ない」

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