異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第81節

 シルヴィとの会話を終えて俺はシャワーを、シルヴィには風呂に浸からせベッドに入る。
 能力が使えれば俺は向こうの世界のベッドでもいいのだが、今は使えない。だから、二人でベッドに入る事にした。俺がベッドでシルヴィが床は俺の良心が痛むし、俺が床でシルヴィがベッドだと俺が寒い。だからベッドに二人で入り、布団を被る。アイリと一緒に寝る時もそうだが、傍に誰かいると暖かいし不思議と落ち着く。


「カズキさん、本当に何もしませんよね」


「しないよ」


 布団を被った時点でオネムのモードに入っている。既に睡魔もマックスだ。


「それじゃあお休み。明日の事は明日考えるから、シルヴィももう寝な。眠れないなら命令してでも眠らせるけど」


「いいえ。それは遠慮します」


「そっか」


 俺は一度大きく伸びをしてから体を弛緩させて目を閉じた。
 シルヴィも何言わずに規則正しい寝息を立て始めた。お互いに疲れていたらしい。






「カズキ」


「ん?」


 地に足が付いていない妙な感覚の中で俺は名前を呼ばれた。


「カズキ、聞こえてる?」


「ああ……聞こえる」


 周囲を見渡してみると間接照明で照らされたような淡い橙色の光に照らされた空間だけがあった。壁も床も天井もない現実味の無い空間だ。


「ここはカズキの意識の中。眠っている間だけこうやって話しかけることができるの」


 暗闇の中からスッとクララが現れた。あの時に見た人の姿だ。
 そしてクララの隣に立つ褐色肌の男。俺の腕と同じ腕の色だ。
 そこでふと自分の腕を見てみると生来からの腕が生えていた。病的に白い細腕だ。


「我の姿を見せるのは初めてだな」


 腕組みをした男の声はカオスの声そのものだった。


「へぇー。カオスってそんな姿だったんだ」


 一言で言えばワイルドな風貌だ。筋肉質で褐色肌なのはシーク人に似ており、薄い髪色はトール人の物のようにも感じる。


「どうやらカズキが魔力をたくさん使ったから、体を構成する組織が魔力由来の物にどんどん置き換わっているみたいね」


「っていうことは?」


「貴様の体は徐々に本来の体から離れているという事だ」


「それって何か変わるのか?」


「例えば貴様の隣で寝ておるシルヴィとやらの能力が我らに通じなかったのと同様に貴様にも能力が通用しなくなるという事だ」


「……なるほど」


 それは悪い話ではない。


「身体の組織全てが入れ替わった時、貴様は魔力の供給無しでは生きられない体になる。そして、魔力切れはそのまま存在の消滅に繋がる。あの騎士のような魔力欠乏症程度の反動では済まなくなる事だけは覚えておけ」


「……ちなみに今の俺の魔力の残量は?」


「……異空間を連続で生み出したのが少し拙かった。かなりの消耗をしている。そうだな……異空間を作り出すだけで言えばあと三回。近接戦闘をするなら二回、大規模な魔術の攻撃もするならあと一回が限度だ」


「……分かった」

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