異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第80節

「私はフィンランドで生まれてずっとそこで暮らしてたわ。能力に目覚めたのは大学に入ってから」


「大学は卒業してるのか?」


「訊くところがそこなの? そうね、結局卒業はしてないわ」


 俺自身が大学生のため、気になってしまった。


「なんで卒業しなかったんだ?」


「それも能力が原因。自分の能力を隠して大学生活中、カジノに入り浸ってしまったから」


 嘘を見抜く能力とカジノ。導き出される結論としては非常に分かりやすい。


「ポーカーとかで大勝ちしたのか?」


「そうよ。一晩で会社員の月収ぐらい稼ぐ日もあったわ。おかげでお金に困らない毎日。そうすると段々大学に自分の居場所がなくなってね。どこから嗅ぎ付けたのか、私のお金を目当てに近寄ってくる人達がたくさんいたの。皆愛想笑いを浮かべて、口にする言葉は全部嘘嘘嘘。それが嫌になって大学も辞めたわ」


「やっぱり人付き合いって大変そうだな」


「ええ。だからその頃は自分にだけ特別な力があると思っていたから、一人でも生きていけると思っていたの。能力とお金、それだけあれば自由に行けて行けると思ったわ。実際、お金が無くなればまたカジノで稼いで欧州内をグルっと回る。そんな生活を一年ほど続けたときにエイジと知り合ったの」


 エイジといえばあの女性か。


「エイジがカジノで気晴らしに遊んでいた時に偶然私が対戦相手になったの」


「エイジも能力でイカサマを?」


「エイジの能力は自分の肉体の年齢を自由に操る能力よ。少女でも老女でも好きな肉体になることができる能力。カジノでイカサマができるような能力じゃないわ」


「そうか」


「エイジは自分以外にも能力を持つ人間が居ることを知っていたから、私の事も能力者じゃないかって思っていたわ」


「まぁカジノで大勝ちするんだから、何か種があると思うのが当然か」


「そうね。私はエイジという初めて他の能力者に出会ったことで色々と話したいと思ったの。だからその後しばらくの間一緒に行動したわ。二人でカジノを荒らして回る生活が半年も続いた頃、ヘラさんと出会ったの」


「ってことはヘラよりもエイジとの出会いが早かったのか」


「そうよ。その頃はヘラさん、ノーさん、サンガさん、今は居ないけど後二人いたわ」


「あれ? バンは?」


「バンはこっちに来てから知り合ったの。日本語もバンから教えてもらったわ」


「そうだったのか」


「……あなた、本当に皆を……その、処理って……」


「処理は処理だ」


「……殺したのね」


「ああ」


 あまり思い出したくない。一瞬とはいえ、人が三人も灰も残さずに消える様はあまりに現実味がない。自分が思っていた人の命の重さと実体験した人の命の軽さのギャップに俺の中で整理がついていない。


「私も殺すの?」


「いや、そのつもりはない」


 これは正直な気持ちだ。俺の行動原理は利己にある。その観点から言えば、シルヴィは俺が望んだ現代での都合の言い奴隷だ。手放す気は毛頭ない。


「本当みたいで良かったわ」


「仲間を殺した俺をどう思ってるんだ?」


「……恐いわ。初めて人を殺したとは思えないもの」


「そうだな……こっちの世界で人を殺したのは初めてだ」


「こっちの……ああ、そういうこと」


「そういうこと」


 俺は既に数千の魔獣や魔人を焼き尽くしている。あれも現実味がないといえば同じだろう。


「それで、ヘラと出会ってからどうしたんだ?」


「私とエイジはヘラさんに付いていくことにしたわ。大金を持ちすぎると狙われやすくもなるから、ボディーガードの代わりになるって打算もあったんだけどね。それからしばらくは各国に飛び回ってヘラさんの手伝いをしたり、好きにカジノを荒らしたりしてたわ」


「日本でも荒らしたのか?」


「日本はダメね。どれも私の能力が通用しそうなものが無いもの。競馬、競艇、競輪、パチンコ、スロット。私はギャンブラーじゃないの。別にギャンブルが好きな訳じゃないわ」


「そういうことね」


 日本では賭博は禁止されている。カジノ構想なんて話も一時期上がっていたが、今は見る影もない。


「これで満足かしら?」


「あともう一つ、シルヴィの年齢は?」


「24よ」


 俺と同い年だ。

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