異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第79節

「俺の能力はこの世界とは別の世界。俗にいう異世界と言われるような場所に移動ができる能力を持っている」


「……異世界……」


 俺の言葉に何か別の意味でもあるのかといったニュアンスで聞き返してくる。


「お前の能力なら俺が本当のことを言っていることは分かるよな?」


「……あなたがそう思い込んでいるだけの可能性もあります」


「なるほど。そういった能力なんだな」


「……そうです。どうせあなたに聞かれれば私は正直に話してしまうのでしょうから言っておきますが……」


「俺に一切の嘘を言うな」


 念のために釘を刺しておく。変なミスリードは勘弁だからな。


「……あなたが気が付いている通り、私の能力は真偽を知る能力です。ただし、本人が思い込みで真実だと思っていた場合、私の能力では真実だと判断します」


 漫画とかではたまに見る異能力の一つだ。読者にミスリードをさせる良い役柄を与えられそうだ。だが、もう一つ気になる事がある。


「クロがお前を捕えた時、俺に聞いたよな。『私達をこの場に転送したのは貴方ですか?』。それに対して俺は『答える必要は無い』。と答えた。真偽以前に俺は答えを口にしていないはずなのにお前は俺が異空間を作った張本人だと見抜いた。これはどう説明する?」


「簡単ですよ。私が持つ上位能力です。私の質問に対し、どんな形であれ返答すると『はい』か『いいえ』で返ってきます」


 つまり、質問さえすればどんな返事も答えになるのか。


「まるで西遊記に出てくる金角と銀角が持つひょうたんみたいだな」


 あれは名前を呼ばれて返事をするとひょうたんに吸い込まれるってチートなアイテムだけど。


「あなたが言っている意味は分かりませんが、そういう理由で私はあなたが異空間の創造主だと見抜きました」


「なるほどね。まぁあれ自体も俺の本当の能力じゃないけどね」


 俺は軽く笑って見せたが、トラスは全然納得した様子はない。


「……今日ほど自分の能力を疑ったことはありません。まだあなたが薬漬けの毎日の中で見た夢を私達に話しているという方が納得できます」


「ひどい言い草だ。でも、本当の事だ。バンのせいで異世界へ渡る能力を今は使えないけど、この場にその異世界の住人はいるからな」


「どこにですか?」


 トラスは部屋の中を見渡し、風呂場や押し入れに視線を向けた。


「俺の中にだよ。異世界の創造主魔神カオスと全ての物語の紡ぎ手クララ。この二人が俺に協力してくれている。カオス、通訳の魔宝石は用意できるか?」


 俺は今までと異なり、トラスにも聞こえるやり取りを見せた。といっても、カオスの声はトラスには届かないが。


「待て……できたぞ」


 俺の手の平に親指程の大きさの魔宝石が出現した。その石をトラスの手の平の上に乗せ、更にその上に俺の手を乗せる。


「クララ、何か話してみて」


「えーっと、聞こえるかしら?」


「え……女の子の声が……」


 トラスはびっくりはしたが俺と手を繋いだままだ。


「一応自己紹介するわね。私はクララ。この世界から見て異世界の魔族の魔人よ。よろしくね」


 クララは実に流暢に話して見せる。


「えーっと、よろしくお願いします」


 目を白黒させるトラスを面白がりながら話を進める。


「次はカオス。頼む」


「よかろう。我はカズキに力を貸しておる者だ」


「今度は男の人だ……初めまして。えーっと、カズキっていうのは」


「まぁ俺の本名だ。表札も出してないし、郵便受けにも名札を立ててないから分からなかっただろうけど、神崎一樹。それが俺の名前。ニーサンは俺のニックネームみたいなもの」


 カオスに本名をバラされたが、まぁあまり気にはならない。
 そういえば、トラスの能力は異世界の住人にも効くのだろうか?


「トラス。クララに能力を使って何か質問してみてくれ」


「質問ですか……えーっと、好きな食べ物は?」


 お見合いじゃないんだからさ……。


「そうね。アンバーが作る料理はどれも美味しいわね」


「トラス、今の答えは本当か? 嘘か?」


「……分かりません」


 俺はトラスに嘘を吐くなと言っている以上、本当に分からないのだろう。やはり、この世界の能力者が持つ能力は異世界の住人に効果は及ばないらしい。俺が向こうの世界で魔王の持つ人の感情を揺さぶる力の影響を受けなかったのと同様の現象だろう。クララの記憶からノーが消えなかったこともこのルールに従っての事だろう。……そういえば、紅蓮も俺が魔術によって生み出した炎は普通の炎ではないとも言っていたっけか。


「とりあえず、これで俺が本当の事を言っているのは分かったか?」


「……俄かには信じられませんが、信じるしかないのでしょう」


 トラスか観念したかのように口にした。


「そういえば、俺だけ本名を知られてるってのも居心地が悪いな。トラスの本名を教えてくれよ」


「そうね。私の名前はシルヴィ・アレン。フィンランド人よ」


 地理に疎い俺でも分かる。白い死神で有名な北欧の国だ。


「なら、今度は……シルヴィの話を聞かせてくれよ」


「それは命令かしら?」


「話したくないなら、話さなくていいけど?」


「……いいわ。話してあげる」

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