異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第77節

「…………」


 トラスは目をパチクリとさせながら周囲を見渡す。


「トラス。ここがどこか分かるか?」


「……私達の隠れ家のようですね」


 寝起きのわりに状況把握は早い。


「私は捕虜になったということでいいんですか?」


「その認識で間違ってない」


「他の三人は?」


 やはり気になるだろう。眠る直前まで一緒にいた仲間が今は傍に居ないのだから。


「処理した」


 言い繕わず短い言葉だけで伝えた。


「…………」


 一体、他の皆は俺にどんな視線を向けているだろうか。どんな気持ちを抱いているんだろうか。


「これから聞くことに正直に答えろ」


 俺はトラスに命令した。髪で見えないが、たぶん奴隷化の刻印が反応しているに違いない。


「ブラッドさん、何から聞き出しますか?」


「一応確認作業だ。お前から聞いた話と俺達の認識に齟齬が無いか聞く」


 ブラッドは俺が話した内容を要約して質問し、トラスは嘘偽りなく答えさせられた。
 質問が終わったころには皆のあくびが増えだした。


「ブラッドさん、そろそろ休めませんか? 俺、能力が封じられたせいか妙に身体が疲れて眠いんです」


「……そうだな。少し待て」


 ブラッドはどこかに連絡をし、数度のやり取りで通話を切った。


「とりあえず、阿藤興行の件は一段落したようだ。関係者は全員、拘束しているらしいからお前らも帰宅していいだろう」


「助かります」


 実際、あれから色々とあった。夜になってから活動した時間が長かったせいか、もう午前四時を回っている。
 魔力の消費は直接的な肉体疲労に繋がらないが精神的疲労はある程度感じている。仮眠を取ったからこそこの時間まで動けたが、これ以上は正直言って動きたくない。
 感情としてはクロを今すぐ助けに行きたいが、理性の部分で今行くべきではないと告げている。


「さてと、こいつの身柄だがどうするか」


 ブラッドは顎でトラスを指す。


「こいつは俺が預かります」


 俺の提案にこの場の誰もが驚いた。


「能力を使えないお前に任せていいのか?」


 ブラッドは少しだけ疑いの眼差しを俺に向けてくる。


「能力を使えないって言っても、このトラスだって戦闘向けの能力じゃないですよ。そうなると単純な力比べなら俺が上ですし、どうせ俺は能力が使えないならこの先ついて行けませんからね。待機するならあのビルも相手に知られてるし、自分の家の方がまだ安全です。それに手錠なりなんなり拘束する手段はありますから」


「……本当に大丈夫なのか?」


「はい。その代わり一つお願いがあるんですが」


「なんだ? 言ってみろ」


「この件が一段落着いたら、トラスをアマテラスの管理下において保護してもらえませんか? あくまで捕虜に対する人道的な配慮という事で」


「いいだろう。元々、そのつもりだったからな。この件が終わり次第、紅蓮さんに俺から伝えておく」


「ありがとうございます」


「その代わり、お前がそいつの身柄を預かるんだ。しっかり見張れよ?」


「任せてください」

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