異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第76節

「クク、お前の合成獣はまだ帰ってこないのか?」


 俺の説明を聞き、ブラッドはククに尋ねた。


「うん。ボクが出した命令は相手が一か所に留まったら帰ってくるようにってものだから、ずっと動き続けてたら帰ってこないんだ」


「ならいい。敵も馬鹿じゃないだろうから、警戒しながら移動してるんだろう。その追跡用の合成獣はあとどれぐらい活動できるんだ?」


「小鳥型だから活動時間としては長いから、常時行動しても丸三日。休みながらなら一週間は大丈夫」


「そうか。ならとりあえず奴らに関してはククの合成獣の帰還待ちだ。猫、奴らが逃亡した方角は分かるか?」


「方角は南東ですね。……そのまま真っすぐ行けば山、その延長線上に空港があります」


 猫はスマホを開きながら答えた。地図でも開いているんだろう。


「山か空港か……。人目を避けて移動しつつ、俺達を迎撃するつもりなのか、それともこのまま国外へ逃げ帰るつもりなのか」


「たぶん、奴らは逃げないですよ」


 俺は確信をもって答えた。
 俺がブラッド達にした説明は事実の羅列だけであり、奴らの動機にまでは触れていなかった。


「こいつらのボス、ファットさんが戦っていたヘラって人物は二十年前の戦い、アポトーシスとの戦いで活躍したというある人物に用があってきたらしいです。要約するとヘラの目的はファットさんです」


「僕にかい?」


 ファットはどこからか調達してきたお菓子を食べながら訊き返してきた。もしかしたら、この家の中にあったもの……かもしれない。


「はい。俺もこのトラスって女性から聞いただけなので詳しい経緯までは分かりませんが、話の流れとしてはヘラはアポトーシスという組織を壊滅させて、その際により強い能力者を探していたそうです。その時に耳にしたのがアポトーシスがヴァジュラダラ、日本語の意味で言えば金剛力士と呼んでいる人物だったんです」


「もしかして、それが僕かい?」


「はい。彼らの口振りからすれば日本という国を守った護国神という感じでしょうか」


「なんだか照れますね」


「お気持ちは分かります」


 俺も救国の英雄と呼ばれている人間だ。開き直らなければ通常の神経では顔から火が出る。


「なら、話は簡単だ。そのヘラって野郎の狙いがファットさんだっていうなら俺達全員で倒せばいい」


「話の流れは簡単ですが、そのヘラという人物の能力が少し厄介らしいです」


「へぇ。そんな情報まで持ち帰ってきたのか? でも、ある程度はこっちでも把握しているぜ。なにせファットさん自身がそのヘラって野郎と戦ったんだからな」


「僕が戦った限りだと彼の能力は身体強化、超回復その類だね」


「そうですね。俺の聞いた話だと更に毒物耐性、熱気や冷気への耐性、そういった能力があるそうで、ヘラ自身は自分の能力を死に難い能力だと言っているそうです」


「……ってことは紅蓮さんみたいな能力は相性が悪そうだな」


「というよりも、即死させないと無理なレベルですね。聞いた話だと首を切られた次の瞬間には健康体でいると聞きました」


 俺の言葉に全員が頭を抱えた。


「もっと詳しい話はこの人に聞いてみましょう」


 俺はトラスの体を揺すって小さな声で命令した。


「起きろ」

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