異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第72節

 鎖で縛られ身動きできないノー、内臓を負傷して口から血を流すバン、両手を上げて降参するトラスとエイジ。


「それじゃ、今度は俺から質問だ」


 形勢逆転。
 レンガを操って作った椅子に俺は腰掛け、目の前の女二人に言葉を投げかけた。


「何かしら?」


 降参した上で開き直ったのかエイジは調子を取り戻している。


「ピンボケ写真に写った男を探しているのは何故だ?」


「……そういうこと。一応確認だけれど、柏木さんが私達を売ったのかしら?」


「いいや。ネタバラシをすると単純にあんた達の会話を盗み聞いてただけさ。それで、その柏木という男に俺達の調査の依頼をしたんだ?」


「そうね……一言で言ってしまえばヘラさんが探しているからよ」


「ヘラさん?」


 ヘラと言えばこいつらのメンバーの一人だ。


「ヘラクレス。彼が私達のリーダーよ」


「あのガタイの良い西洋人の男か?」


「ええ。彼がダイアと呼んでいる男を探しているの」


「何の目的で?」


「本人は戦いたいからだそうよ」


「……そもそもお前らは何なんだ? 何かの組織に属してるのか?」


「私達はどこにも属していないわ。ヘラさんに誘われたからなんとなく一緒にいるだけ」


「……アポトーシスという名称に聞き覚えは?」


「聞いた覚えがあるわね。トラス、あなたは覚えてる?」


「一年前ほどにヘラさんが壊滅させたと自慢げに言っていた気がします」


 壊滅……。


「そのヘラって人物一人でか?」


「そうです」


 その話が本当ならヘラという人物は組織一つを壊滅させることができるだけの能力の持ち主という事になる。もしかしたら、国一つを占領した魔王級の強さなのかもしれない。そう考えるともっと情報が欲しい。


「そのヘラはどんな能力を持ってるんだ?」


「……ヘラさんは自分の能力を死に難くなる能力と言っています」


「死に難く?」


「はい。あらゆる負傷を一瞬で完治させ、あらゆる毒物に耐性を持ち、熱気や冷気にも耐性を持つ能力だそうです」


「だから死に難い能力と?」


「実際、首を落とされても次の瞬間には五体満足で立っていたことがありますから」


「…………」


 さすがの俺も首を落とされたら再生できないだろう。


「それで、そのヘラが戦いたいという奴が俺達の中にいると?」


「はい。ヘラさんがアポトーシスの幹部から聞いたそうです。『極東の島に物凄く強い奴がいる。あいつは国を守る化身だ』と。どうやら、ヘラさんがもっと強い奴を知らないかと聞いて回ったらしいです」


 戦闘狂バトルジャンキーか。


「彼らはその人物を日本が仏教の国という所から金剛力士ヴァジュラダラと呼んでいたようです。もっとも、ヘラさんは呼びやすいようダイアと呼び換えましたが」


 金剛力士でダイアね……紛らわしい。


「でも、あの戦いに……」


 俺達は関わっていないと言い掛けたが、一人だけいた。
 いや、そういうことか。あの当時に関わっている人間がいるじゃないか。
 ファットだ。

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