異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第61節

 ククルカンが偵察に行っている間、俺は変装の準備をすることにした。


「カオス」


「なんだ?」


「変装の道具とか持ってないか?」


「変装の道具? 例えばどんなものだ?」


 変装と言えばやっぱり服装もそうだが、顔を隠す事が大事だろうか。


「仮面とかかな」


「仮面か。それなら丁度いい物がある」


  カオスはそういって俺の右手に何かを創造する。それは張り付いた笑みを浮かべた白い面だった。


「これ、あいつの顔じゃないか」


「これならば顔を隠すに十分だろう」


「まぁ確かにそうだけど」


 俺は少し戸惑いながらも仮面を付けてみる。すると、穴も開いていないのに何も付けていないようにクリアな視界が広がる。口元も何の違和感もなく、マスクをした時のような息苦しさもない。まるで仮面そのものが体の一部のようにフィットする。


「なんか奇妙な感覚だな」


 喋ってみても何の違和感もない。自分の顔に手を伸ばすとツルツルとした仮面に触れた感触がある。


「その仮面ならば視線を読まれることも無ければ、口元を読まれることもない。それに数分間ならば水中での呼吸も可能だ。顔への攻撃もナイフ程度なら弾くことができる」


「へぇ。変装道具ってだけじゃなくて防具としての機能もあるのか」


 変装のための装備だから常用はできないが、こういった隠密作戦の時は使えそうだ。
 あとはいつもの戦装束の革装備に着替え準備完了。


 チロチロ。
 いつの間にかククルカンが戻ってきている。あまり時間は経っていない。


「もしかして、もう見つけたのか?」


 コクコク。
 ククルカンは頷いて尻尾で駐車場の外を指し、その方向にはビルが立ち並んでいる。
 その看板に堂々と阿藤興行と書かれている。どうやらあのビルが怪しいとククルカンは思ったらしい。
 俺はククルカンを抱えて杖を取り出し、ぶら下がったまま杖を飛ばして向かいのビルの屋上に移動する。


「ククルカン。この中に怪しい連中がいないか調べてくれ」


 コクコク。
 再びククルカンを偵察に向かわせ、数分もすると戻ってきた。


「怪しい奴らは居たか?」


 コクコク。
 という事はここが目的の場所か。


「何人いた?」


 ククルカンは自らの羽を二本抜き、その羽を十字に置く。


「十人?」


 コクコク。
 中に十人なら俺達を追跡していた六人がいるとして、他に四人いるわけか。
 今回の俺の目的は追跡者達が呼んでいた頭と言われていた人物に話を聞く事。話の流れによっては抹殺する。
 方針を固め、まずは中に潜入することにした。
 屋上から中に入るには通常の手段ならば鍵の掛かった扉を通る必要がある。だが、扉の隙間からイラストを挿入してIGを経由することで中に侵入できた。

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