異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第60節

「頭とか兄貴とかまるで任侠映画のワンシーンみたいだな」


 あの二人のやり取りの中で気になった点がいくつもあるが、まずは整理だ。
 あの二人と他四人は何らかの組織に属している。恐らく極道とかヤクザのような非人道組織と思われる。そして、彼らの上に立つ者。そいつが部下に命令して俺らを尾けさせている。で、女の推測ではその上司にあたる人物も何者かからの命令、あるいは依頼で動いている。
 彼らのターゲットは通称ダイアと呼ばれている人物。写真から察するに短い黒髪に男っぽい輪郭ぐらいしか特徴はない。彼らはそのターゲットを俺と絞り込んでいるようだが、俺に写真を撮られた記憶はない。盗み撮りをされた可能性もあるが、それならば尾ける必要も無くターゲットは俺だと分かるはずだ。
 それと女の方が言っていた明日決行するという作戦というのも気にかかる。おそらく、俺らに対して何等かのアプローチをするつもりなのだろうとは分かるが、その中身までは分からない。


「さてと……どうしたものか」


 奴らの根城を突き止めて、奴らから直接作戦とやらを聞き出すもよし、その頭なる人物に接触するもよしだ。ただ、もしも戦闘になった時にどうするかが問題だ。並の人間であれば負ける道理は無く、相手が銃火器を持ってきたとしても多少の怪我は治療可能だ。ただ、俺自身のスタンスがまだ決まっていない。
 あっちの世界であれば自身の身を守るため人斬りぐらいなら多少は目を瞑ってもらえるかもしれない。だが、ここは現代だ。現代の道理に照らし合わせれば、簡単に人斬りはできない。それに俺はまだ人を斬ったことが無い。


「いや、ここは人斬りの経験をしておいた方がいいか」


 もし誰かを守りたい時に躊躇した場合、俺は間違いなく後悔をするだろう。それを避けるためならば俺の手が血に塗れてもいい。俺は聖人でもなければ聖職者でもない。
 俺は既に一万にも上る魔神や魔獣をあの業火でその一切を燃やし尽くし、魔王すら一刀両断している。なのに今更人斬りぐらいで何を怖がる必要がある。


「ククルカン。仕事だ」


 俺の腰で眠っていたククルカンは可愛らしい目を開き、首をこちらに向けている。俺の言葉を待っているらしい。


「ここら辺で極道かヤクザの事務所を探して欲しい。俺はその間、ここで待機しておく」


 この商店街にはいくつか有料駐車場があり、その中のココを選んだという事はこの駐車場からそう遠くない場所に事務所を構えていると考えられる。
 ククルカンは小さい顔をコクコクと動かして俺の腰から下り、壁に設けられた排水管を器用に下っていく。

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