異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第58節

 夜。
 すっかり空気も冷え、俺の吐く息は街灯りの中で白く立ち込めた。
 事務所の屋上から雑踏を見下ろす。
 時刻は19時。夜とは言ってもまだまだ活気は収まる様子はない。


「カオス。木製の杖は作れるか?」


 寒空の下、マントで身をくるみながら訊く。


「ああ。だが、それがどうかしたか?」


「こういった形の杖を作ってくれ」


 俺は簡単な絵を描いてみせた。長さは一・五メートル。先端に行くにつれ太くなり、途中から稲妻模様のようなギザギザとしたデザインだ。


「これでよいか?」


 カオスは俺がデザインした通りの杖を作り出してくれた。木製だけに綺麗な木目が走っている。


「ああ、ありがとう」


「これを何に使うのだ?」


「ちょっと空を飛んでみようと思ってね」


 前にハリソンから飛行魔術について聞いた事があった。
 今でこそ禁止されているらしいが、昔はわりと研究されていたようで自分自身を飛ばすと危険が付きまとうが、何かを飛ばした上に自分が乗るとなれば危険が少ないらしい。それを俺自身が再現してみようと思ったからだ。
 杖に跨り、杖の両端に力点をイメージする。
 地面に対して二点が水平になるよう位置を制御。
 俺と杖に働く重力と同程度の反重力を杖に与え、浮遊状態を維持。
 そのまま杖に垂直方向の力を与え、ゆっくりと上昇する。
 たったそれだけで俺は空を飛べた。


「案外簡単なんだな」


 少しぎこちないが、ゲームのコントローラー操作を指が覚えるような感覚で次第に自由に操れ始める。
 前進、旋回、上昇、下降。
 魔力の注ぐ量によって更に速度を出せそうな手ごたえがある。少なくとも自動車並には出せそうだ。
 練習もそこそこにして、空へと舞い上がる。


「カオス。クララの分身はどこにいる?」


「今向いている方角から少し右、距離にして五キロ程だ」


「案外近いな」


 杖を滑らかに前進させ、遮蔽物の無い空を思うがままの速度で走らせ、五分も経たぬうち目的の場所の真上まで来る。どうやら商店街の通りから一つ離れた場所にある立体駐車場に例の車があるようだ。
 俺は人目に付かないように下降し、例の車のフロアに降り立った。
 周囲には誰もいない。


「カズキ、例の三台の車。そこに並んでるわ」


 クララが言う通り、車が三台横並びになっている。他にも空いた駐車スペースがあるのに横並びとは随分仲がいいようだ。
 そのうちの一台、俺がクララの分身を仕掛けた車に近寄る。


「どうだ?」


「ええ、色々と情報が手に入ったわ。今すぐ聞く?」


「ああ、頼む」


「じゃあ、語らせてもらうわね」
 

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く