異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第57節

 その後の見回りは特に目立った異常もなく市内を尾行者と共にグルグルと回り、拠点に戻る。尾行が開始された時間は俺達が出発した時間から間もない。そのことから奴らもこの場所を押さえていると踏んで巻くこともなく戻った。


「三人ともお疲れ」


 ブラッド、クロ、ククの三人が丁度くつろいでいる所だった。クロの雰囲気的にシャワーを浴びた後であることから、少し前に訓練していたのかもしれない。


「今日も収穫無しか?」


「それが、どうやら僕たちを尾行していた車がいたらしいんだ」


「尾行? どこのどいつだ?」


「それはまだ分からないけど、ニーサンが相手の車にマーキングをしたって」


「そうなのか?」


 ブラッドは俺に視線を寄こす。


「まぁ一芝居打って尾行者の車にマーキングしたんで、奴らがねぐらに帰ったら追いかけます」


「……そうか。この後追いかける気か?」


「少し休憩したら一っ走りしますよ」


「車は必要か?」


「いいえ。今日は夜風に吹かれたい気分なんで」


 少し気分が高揚している。なんかスパイっぽい。


「手は足りてるか?」


「俺一人で十分です」


「……クク、お前の合成獣一匹貸してやれ」


 俺を心配してくれているのか疑っているのか、ククの合成獣を俺に連れてけという。


「どの合成獣がいいですか?」


「鳥と蛇の合成獣だ」


「はーい、分かりました」


 ククは三つの弾丸を込めて引き金を引くと、赤いゲル状の液体は次第に形を変え、黒く細長い体、そして黒い羽根を持った合成獣となった。


「この子の名前はククルカン。羽毛ある蛇って意味の名前、可愛がってあげてね」


 ククルカンはヘビをチロチロとさせながら羽を器用に畳んで俺の体に巻き付きながら登り、腰当たりで輪となって落ち着いた。


「空からの偵察でも狭い所への侵入でも任せてあげて。明日の朝までは活動できるはずだよ」


「ああ、ありがとう」


 そこでふとクロの様子がおかしい事に気が付いた。


「どうかした? クロ」


「いえ……あの……」


 クロは俺と目は合わさず、俺の腰あたりに視線を向けている。


「もしかして、爬虫類が苦手かな?」


 クロの返事は首を頷くジェスチャーだ。


「そっか。覚えておくよ」


 俺はカオスにマントを出してもらい、全身を隠す。これでククルカンをクロに見せずに済む。


「何かあったら俺に知らせろ。昨日の朝、連絡先は教えただろ?」


「分かりました」


「クク、クロ。お前らはしばらくここに残れ。もしかしたらその尾行者に家を突き止められているかもしれん」


 そうか。この二人は実家暮らしなのか。となると、相手の目的にもよるが手段を選ばない人間ならば家族を人質ってのは十分考えられる話か。いや、二人だけじゃない。猫だって俺だってココは地元だ。ファットさんだって家族がいる。ブラッドは……分からない。


「ちょっと仮眠を取らせてもらう」


 俺はククと共同で与えられた部屋に向かい、夜を待った。

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