異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第56節

 店を出て近所のコンビニまで歩いてタバコを買いに行く振りをする。その時、奴らの車が駐車している事も確認した。


「クララ、やつらは付いてきてるか?」


「ええ、二人一組の若い男女。服装も周囲に溶け込んでるわね。かなり慣れてるみたい。それに可能な限り、視線をこっちに寄こさないようにしてる」


 さすがに徒歩の俺に対して車で尾行をするわけもなく、歩いて尾行する人間が二人。俺の視界に入らないように気を付けているみたいだが、クララの視界にはバッチリと入っているようだ。


「そっか……。ところで話は変わるけどさ、クララってノイマンみたいに魔石に分身を宿すってことは可能か?」


「……そういうことね。可能だけど?」


「どれぐらい持つ?」


「そうね。この世界なら最長でも半日かしら」


「分かった。なら悪いけど、この魔石に分身を頼む」


「分かったわ。あんたの魔力、貰うけどいいわよね?」


 クララは話が早くて助かる。


「ああ。ところで、分身が得た情報を本体が知るためには条件とかあるのか?」


「近づけるだけでいいわ」


「オッケー。カオス」


「なんだ?」


「クララの分身を追いかけることは可能か?」


「容易だ。この世界は魔力の一切を感じないからな」


 作戦の前提はクリアできたか。
 コンビニまでの近道のため、裏路地を通るように移動すると、さすがに追いかけては来なくなった。
 その間、こっそりと備えのイラストを取り出す。これを奴らの車に忍び込ませれば、いつでもアクセスできるからだ。


 コンビニでタバコを買ってから焼き肉屋の駐車場の手前まで戻り、タバコに火を付け煙を昇らせながら、自然な足取りで奴らの車に近寄り、ドア越しに車内にクララを宿した魔石を出現させる。出現場所は助手席の真下。まず見つかることはないし、見つかったとしても一見ただの小さなガラス片に見えるため怪しまれもしないだろう。
 物体を吸収、具現化できるものは魔力によって構成された物限定のため、現代で印刷したイラストを中に具現化できないのは残念だ。
 時間があればあっちの世界の絵師でも雇って同じ絵を複製してもらおう。
 タバコを靴裏で消してゴミ箱にポイとして店に入る。


「ニーサン、何か能力を使ったみたいだけど、何かしたの?」


 やっぱり猫には俺が能力を使った事は分かるらしい。


「ちょっとマーキングしてきた。奴らがねぐらに帰ったら紐を手繰り寄せるだけで居場所が分かるって寸法さ」


 俺は席について二人が焼き始めた肉を少し頂戴する。


「ニーサン。この後はどうしようか? 君がそういうならこのまま見回りを済ませてしまっていいのかな?」


「そうですね。向こうから何かを仕掛けてくるって感じでもないですから様子見で」


 後は果報は寝て待てだ。

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