異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第55節

 個室を借り、適当に焼肉五人前を注文して作戦会議に入る。
 俺と猫はファットの言葉を待った。


「僕達の任務は未発見の能力者を探し出して保護する事。できることならこのまま穏便に済ませたいところだけど」


「穏便に済ませられますかね?」


「俺達三人いれば、なんとか捕まえられませんか」


 ファットと猫は俺と違って穏便派のようだ。


「僕としては捕まえるよりも泳がせたいですね。相手もまさか尾行に気が付かれたとは思ってはいないでしょうから」


「泳がせるってことは相手の拠点を教えてもらうってことですか?」


「そういうことです。こういう時、クク君がいれば小動物や鳥を使って逆に追跡する事も可能なのですが」


 確かにククの能力ならそういったこともできそうだ。


「猫の能力で便利な奴はないのか?」


「あるにはあるけど、今は使えないかな」


「今は?」


「前に私の能力は色々と制限があるって教えたのは覚えてる?」


「ああ、覚えてる」


「私の能力、『泥棒猫コピーキャット』は能力者の能力を模倣するんだけど、そもそも能力ってのが何かってことだけど、ニーサンは分かる? 能力の正体」


「さっぱりだ」


「うん。私もさっぱり分からないんだ。だけど、東京にあるアマテラスの本部には能力を研究するための研究所があるの」


「研究所?」


「うん。能力とはそもそも何なのかってことを調べる機関かな。私はそこに行った事があって、能力の正体についても色々と聞いたんだ」


「能力の正体って何なんだ」


「簡単に言うと神様の力」


「……神様?」


「そう、神様。宗教上の神様じゃなくて、便宜的な名称としての神様。創造神とでも言えばいいのかな」


「創造神……」


 ある意味カオスもそれに含まれるのだろうか。


「この世界のシステムの成り立ちの根源、全ての源。それに干渉する事が私達の能力って事らしいの。だから、研究所の人達はこの能力の事を神業って別名で呼ぶことの方が多いみたい」


「神業か。でも、それと猫の能力と何の関係があるんだ?」


「それなんだけど、能力者は全員が受容体レセプターってのを持っているっていう仮説で今は研究が進んでるみたい」


「レセプター?」


「うん。その受容体は神業の因子を体内に取り込んで身体や精神を作り替えて、普通の人間を能力者にするの」


「待て、その神業の因子ってのは何なんだ?」


「それが分からないの。私も同じ質問をしたら、受容体がめしべで神業の因子が花粉だって誤魔化されちゃった。ただ、DNAが置き換わるレベルでの変化が起きている事は確認されているみたいだけど。それでね。人間の体内にはその受容体があって、その受容体が神業の因子を取り込んだ結果、変質して能力者になるんだけど、その変質の種類や度合いで能力が決まるの。それで、私の能力はこの受容体の変化が特別らしいの。どう特別かって言うと、他人の受容体を真似るように変化するってこと」


「待てよ……その受容体ってのが身体や精神に影響を与えるんだろ? そんなコロコロ変わってて体の方がは大丈夫なのか?」


「それがね。前にも言ったけど、私の能力は他人の能力を模倣はできるけど、完全じゃないの。能力を使いすぎると本来の能力者より反動は大きいし、自分を傷つける能力もあるから。それに受容体の変化にはそれなりに時間がかかるの」


「時間がかかる?」


「うん。眠っている間じゃないと私の受容体は変化しなくて、少なくとも三時間以上は連続で睡眠をとらないとダメ」


「そうなのか」


「今私が使えるのは能力感知とファットさんの能力、それから水を操る能力の三つだけ」


「猫って同時に使える能力の数に制限もあるのか?」


「うん。受容体が変化できる度合いによって決まるけど、最低で1個、最高でも5個」


「なるほどね。で、今だとその三つしか使えないから逆尾行はできないって訳か」


「うん。そういうこと」


 ってなると、俺が頭を捻るしかないか……。
 漫画とかだとこういう時に盗聴器を偶然持っていたりするんだけど……。
 ……待てよ……。


「ちょっと休憩。ファットさんって煙草吸いますか?」


「僕は吸わないけど、ニーサンは吸うんだっけ?」


「いいえ。吸いませんよ」

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