異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第54節

 晩餐会を終え出席した皆も散り散りとなる。
 クリスからの申し出で城に泊まらないかと誘われたが、明日もあるからと断った。
 屋敷に戻った俺はハリソンとロージーに俺が手に入れた領地に関する情報を集めるよう伝え、ジェイド、アンバー、アイリにはロイスから魔術についてもっと教わるよう、フランにはドーラからみっちり訓練してもらうよう伝えた。


 異世界に関してはとりあえず一段落着いた。次は現代で俺の役割を果たさないといけない。


 翌日。
 いつも通り事務所にIG経由で出勤しては朝のミーティングで業務連絡を行う。
 昨日の外回りはブラッド、猫、クロだったようで今日の外回りはファット、猫、俺の三人だ。
 運転がファット、レーダー役が猫、俺は特になし。いざ戦闘になった時の戦闘員みたいな保険的立ち位置だ。


「二人とも、シートベルトはいいですか?」


「はい。大丈夫です」


 運転席にファット、助手席に猫。俺は後部座席に位置取り、車は出発する。
 車は数時間をかけ市内をグルっと回り、途中で昼食を取るためどこかに立ち寄る予定だ。


「猫、ちょっと訊いてもいいか?」


「何?」


「猫の感知能力ってどういった物なんだ? 能動型で感知範囲が半径一キロ以上ってのは聞いたけどさ」


「んーとね、私が感知に集中している時に範囲内で能力者が能力を使ったら距離と方角が分かるの」


「誰が使ったかとか分からないのか?」


「それは分からないね。でも、この能力の本来の持ち主は大まかな能力の分類ぐらいならできるらしいよ。身体操作系能力者か自然操作系能力者、あとはそれ以外」


「じゃあ、本来の能力者ならファットさんと紅蓮さんが別々に能力を使ったら区別ができるってこと?」


「そうだね」


 ってことは俺の能力ももしかしたら看破される可能性が有るのか。気を付けないと。


「私からも質問いい?」


「なに?」


「ニーサンって今、彼女とかいるの?」


「いないよ」


 その質問をお前からするか。


「そっか、ならいいんだけど」


「なんでそんなこと訊くのさ」


「んー、なんかニーサンから女の子の匂いがしたような気がしたから、ちょっと気になってね」


 それはたぶんアイリの匂いだ。


「彼女を作る気なんてさらさらないね」


「でも、女の子が嫌いってわけじゃないでしょ?」


「嫌いじゃないし、むしろ好きだし」


「なのに彼女は作らないの?」


「ああ」


 少しムキになっている自分を自覚する。


「そっか……」


「なんでお前が残念そうなんだよ」


「ううん。気にしないで」


 猫の意味深な言い方が少し気にかかる。こちらからは顔が見えないため、どんな表情でこの話題を振っているのかも分からない。


「猫こそどうなんだよ。彼氏はできたのか?」


「ううん。いないよ」


 その答えに忌々しくも安堵してしまった。


「そういえば、お二人はどういった関係だったんですか?」


 ファットがウィンカーを出して左折しながらバックミラー越しに俺に訊いてきた。


「元クラスメイトですよ」


「そうだったんですか。ブラッド君からは二人は古くからの知り合いとしか聞いていなかったので」


「まぁそうですね。小学校に入学してから高校一年まではずっと同じクラスだったかな」


「うん」


「ということはお二人は幼馴染というやつですね」


 確かにそう言われてみればそうだ。高校を卒業してからは連絡の一切も無く、顔を合わせる事も無いぐらいに疎遠となったため、そう言われるまで自覚は無かった。


「まぁ互いの親の顔ぐらいは知ってるかな」


「うん。そういえば、ニーサンのおじさんは元気にしてる?」


「んー、まぁ元気だよ。相変わらずだし。猫のおばさんは?」


「私がずっと色んな所を転々としてたから心配ばっかりしてたんだけど、私がしばらくこっちに滞在するって言ったら凄く喜んでた」


「そっか。元気そうでよかった」


 小・中学の頃は運動会やら文化祭やらで猫のおばさんの顔を見かけることはあった。猫の母親なだけに美人で優しい人という印象がある。年相応に老けていたが、いつも笑顔を浮かべていたから口元や目尻の皺がより一層優しそうな雰囲気を醸し出していた。


「カズキ、変な車がいるわ」


「ん?」


 突如としてクララが何かを忠告してきた。
 俺の妙な反応が猫やファットにも伝わったらしく、緩んだ空気が少しだけ引き締まった。


「さっきから三台の車が代わる代わる追いかけてきてるんだけど、これってこっちだと普通の事?」


「いや、普通じゃないな。どの車だ?」


「右後ろの車。さっきと同じなら、このまま追い越して右折すると思うわ」


 可能な限り不自然にならないよう視線を右に向ける。


「そういえばファットさんってお子さんはいらっしゃるんですか?」


 後部座席から運転席に座るファット越しに追い越す車を確認する。


「中学に上がった娘が一人いるよ」


「一人娘ですか」


 一台の白い軽自動車が追い越していく。


「今追い越した車がそうよ」


 ナンバープレートはこの地区の物でレンタカーではない。
 一応、クララが見たという怪しい車のナンバープレートと外観を聞き出して全てメモる。


「ファットさん。お話の途中すみません」


「どうかしたのかい?」


「どうやら追跡されているみたいです」


「本当かい?」


「はい。何台か連携して追跡しているみたいです」


「猫さん、近くに能力者は?」


「能力を使った能力者はいません」


「ということは無能力者かな」


 判断はファットに委ねよう。その決定に俺は従う。


「まずニーサンが掴んでる情報を全て下さい」


「分かりました」


 俺はクララから聞いた情報をそのままファットに伝える。
 追跡している車は三台。一台につき二人乗っており、三台あるから計六人で行動しているようだ。


「驚いた。ニーサン、それって能力を使ったわけじゃないんだよね?」


「そうですよ。それは猫が証言してくれます」


「猫さん、本当?」


「……はい」


 何故か俺に疑いの眼差しを向けてくる猫。まぁそんな視線は受け流すけど。


「それで、どうしましょうか?」


「……とりあえず、あそこで作戦会議をしましょう」


 そういってファットが指差したのは個室を貸し切って焼肉をするタイプのお店だった。

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