異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第49節

 クリスが去って、執事が現れる。一度見た顔だが、名前は忘れた。
 執事は今日の授与式の簡単な流れと注意点を幾つか教えてくれた。一応、俺は異国の者だと周囲には知らせているため、少々の無作法は目を瞑ってくれるらしい。
 授与式の後、俺はまたこの貴賓室に戻ることとなる。それから晩餐会が始まるまでは待機になるが、貴族の仲間入りをした俺に挨拶をしたい人間が訪れるから少しの時間だけでも相手をして欲しいとのこと。
 そして、夕方には晩餐会に参加し、夜も更けたら解散の流れとなるらしい。
 流れを大まかに把握したところで執事は退出し、間もなく授与式の始まりとなった。 


「さてと、行きますか」


 俺達は貴賓室を後にし、謁見の間へと向かう。
 大きな扉の前には兵士がおり、名前を呼ばれたタイミングで扉を開いてくれるそうだ。
 扉が開かれたら俺が中に入り、爵位を授かる。その間、俺が言葉を発する必要はないようなのである意味気が楽だ。
 扉の奥からは王の祝辞が述べられており、しばらくしてから俺の名が呼ばれる。
 扉が開かれ中に入る。


 あの激闘の舞台が今日は晴れ舞台だ。


 管楽器による祝福の音色がこの部屋を見たし、参列者から凄まじい拍手が送られる。
 気後れをしながらも、できるだけ堂々と歩きながら、視界の端では見知った顔もいくつかあったのを確認した。
 長いようで短い距離を歩き、玉座の前で立ち止まる。
 目の前には杖を突いた現サニング王。その後ろにはサニング王妃、以下王子、王女が並んでいた。


「救国の英雄、カンザキ・カズキ。貴殿の武勇をここに称え、公爵の爵位を授けるものとする」


 あやうく礼の言葉を言いそうになるが、ここでは黙って受け取るものだった。それにしても、サニング王の宣言に周囲がざわついているのが少し気になる。元々、俺が爵位を受け取るというのは公の事実なはずだ。でなければ、この場に来ている皆が訳も分からず参列していることになる。
 俺は少し訝しがりながらも、とりあえずはその疑問を脇に置いた。
 サニング王が言葉を区切ると初老の男、たぶん大臣とか執政官とかそんな役職の偉い人が木造の箱を手にして歩み寄り、箱の中からスクロール状の書面を取り出し読み上げる。
 分かりにくい文語だったが、要約すると陽の国の領地の一部を俺に譲渡し、自治権を認めるといった内容だ。更に要約すれば、俺は小国の王になれるらしい。そこで周囲がざわついた件について合点がいった。
 俺は大臣と思しき初老の男から書状を受け取る。
 これで一通りの儀式が終わった。俺はサニング王に一礼し、回れ右をして退室した。

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