異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第44節

 俺と紅蓮は互いに席に着き、お姉さんはお茶を淹れてくれた。俺を出迎える直前に既に用意していたのかという速さだ。


「さてと、今はニーサンと呼んだ方がいいのかな?」


「そこはお任せします」


「では、私もニーサンと呼ばせてもらいましょう」


 紅蓮はコホンと咳払いをする。


「ファットさんから話は聞いています。ニーサンが生み出した宝石を売却したいという話でしたね」


「はい。できれば、質屋より高く相場に近い価格であれば文句はないです」


 それより低ければ質屋に売ってしまってもいいとメタに伝える。


「いいでしょう。売却ルートに関してはこちらからご用意します。その前にニーサンが生み出した宝石をいくつかサンプルとしていただいてもよろしいですか? 一応こちらで調査し、普通の宝石との相違点がないか確認します。もちろん、提供いただいた宝石に対する対価はこちらからお支払いしますので」


「分かりました。どれぐらいの量があればいいですか?」


「サンプルは多いに越したことはありませんが、少なくとも三つは」


「じゃあ、とりあえず」


 適当に魔力が空となった大小様々な魔石を卓上に百個ほど並べる。


「この中から好きに選んでください」


「…………」


「…………」


 紅蓮とお姉さんが面白い顔をしている。
 紅蓮は目頭をこすっては気を取り直し、お姉さんに目配せをすると、お姉さんは宝石群の中から小振りな物を五つ摘まみあげた。


「では、暫定ですがこちらをお支払いしましょう」


 紅蓮は財布を取り出し、現金で五万円をポンと渡してくれた。


「鑑定した後、不足分は後からお支払いいたします」


「分かりました」


 俺は五万をそのままポケットに突っ込む。


「あと、もう一件いいですか?」


「なんでしょう?」


 俺にとってはここからが本番だ。
 ここまでの交渉は俺にとっては今から始める交渉のための前提みたいなものだ。


「アマテラスの職員を一人、それから倉庫を一つ借してください」


 俺にとってこれが今一番重要な課題だ。


「職員と倉庫ですか? なんのためでしょうか?」


「そこは詮索しないでいただけると助かります」


 虫の良い話だと自分でも思っている。


「そういうわけにはいかないです。理由も説明されず、職員を貸せと言われて頷くことはできません」


「そうですか……」


 俺はシュンとした面持ちを浮かべる。


「何かお困りごとですか?」


「そういうわけではないのですが……」


 心底ガッカリした声を上げ、項垂れる。


「どうしても説明できない事情があるのですか?」


「そうですね。説明すると俺にとって不利益になりますから、率直に言って話したくないです」


「そうですか。ちなみにこの話を断ったからと言ってニーサンがアマテラスを離れるという訳ではないですよね?」


「もちろんです。ただ、アマテラスの職員と倉庫が借りられないとなると、外部の人間に頼む必要が出てくるというだけの話です」


「外部の人間にですか?」


「俺がやりたいことには少なくとも俺以外に一人以上の人手が欲しいんです。そして、物資を貯蔵できる倉庫も」


 俺はあえて分かりにくいように説明する。
 俺の本意は異世界に物資を送るためのシステムを現代に構築するために物資を貯蔵する倉庫と人手が必要だということだ。ただ、それをそのまま説明しても理解されないだろうし、理解もされたくない。というか、理解されたら困る。


「もしや、それはあなたの能力に関する話ですか?」


 紅蓮が指す能力とは俺が使う魔術だろうが、俺は内心ビクリとした。という演技をした。


「やはり、能力に関する事ですか」


「……まぁそういうことです」


「もしや、ニーサンの能力は代償系能力ですか?」


 代償系能力。その分類にされる能力を持っている能力者をファットしかしらないが、魔力を代償として魔術を使っているなら代償系能力と言ってもあながち間違いではない。


「たぶん、そうなんでしょうね。ファットさんの能力の説明を聞いた時にもしかしてと思うことはありました」


「なるほど……それで合点がいきました」


「合点?」


「ええ。ニーサンを調べている上で不可解な点が多くありました。あまりお酒を飲まれないニーサンが大量の酒類を購入したり、一人では食べきれないだけの食糧を買い込んだこと。また、薬品類を購入されたことも確認できています。それらに使われていた包装紙等のゴミがニーサンの出したゴミに含まれていなかったという点です。一番驚いたのは大量のガソリンを購入した時ですが」


「……もしかして、俺が出したゴミ袋まで調査対象に入ってました?」


「おっと……口が滑りすぎたようですね」


 俺を調査してたのって確か猫だよな……。いや、まさか……ね。


「私の推理ではニーサンの能力は何かの物質、食糧や飲料、薬品、燃料といった物資を代償として能力が使える。そういったところではないでしょうか」


 ではないでしょうかと言われても困る。が、ここは紅蓮の話に乗っておこう。


「紅蓮さんの推理に関して俺からコメントは特にありません。ただ、職員と倉庫を貸してくれるかどうかという点だけが重要ですから」


 あたかも図星を突かれたように否定的なトーンで紅蓮の言葉を突き話して、向きになったように話を勧めようとする。


「……いいでしょう。特別にあなたに一人、専属の部下を付けましょう。それと倉庫も」


「……本当ですか?」


「ええ。大量に物資を購入するのであれば、怪しまれないよう体裁を整えたほうがいいですね……。そちらもこちらでご用意します」


「それは助かります」


 俺は素直に感謝した。
 なにせ向こうの世界で国を作るとなれば金と物資、両方が足りない。安定した換金ルートが確保でき、安全に物資を調達できるルートまで用意してくれるとなれば文句のつけようがない。
 少し心配なのは向こうの世界への物資供給の要をアマテラスに委ねる事だが、リスクとリターンを考えればリターンの方が大きい。
 実際、学生身分の俺が倉庫を借りる事は難しそうだし、人を雇うのも難しい。アマテラスという組織に利用される代わりに利用する。要は相互関係を結べればそれでいい。

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