異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第43節

 ファットの案内で連れてこられたのはホテルだった。
 安くて美味くて量があるとのことでファットはここの常連らしい。昨日もここへファットと二人で食事をしたらしい。
 料理の種類があるため、好き嫌いが多い人間でも好きな物だけ選ぶこともでき、デザートがあるため女性を誘うにも悪くない。
 三者三様で思い思いの料理を取って席に着く。
 静かに食事をとる中、携帯の着信音らしき音がファットからする。
 ファットが携帯を手に取り電話に対応する。そのやり取りから、俺がさっき頼んだ件のようで電話の相手は紅蓮っぽい。


「ニーサン。支部長から」


 ファットから携帯を受け取り、耳に当てる。


「こんにちわ。カンザキさん、今はニーサンと呼ばれているようだね」


「はい。俺のあだ名みたいなものです」


「それはなにより。さて、ファットさんから話は聞いてるよ。宝石を売却するためのルートを紹介して欲しいという事だったね」


「はい。お願いできますか?」


「ああ、大丈夫だとも。好きな時にこちらに来てくれ。なんなら今からでもいいが」


「いいんですか?」


「いいとも。そのつもりがあるなら、今から車を用意させよう」


「いえ、その必要はありません。十分後にそちらにお邪魔しますね」


「十分後かい?」


「はい」


「……分かった」


 通話を切り、ファットに携帯を返す。


「ニーサン。今から行くのかい?」


「はい。善は急げと言いますから。できるだけ早く戻ります」


「でも、車もないのにどうやって?」


「まぁ空でも飛んでいきますよ」


 冗談で言ったつもりだが、よくよく考えれば本当に空を飛ぶことができるかもしれない。今度、練習してみよう。


「ニーサンがそういうならいいですけど」


「それじゃあクロちゃんもまた後でね」


「はい。今日は特訓に付き合っていただいてありがとうございます」


 むしろ、付き合ってもらったのは俺の方な気もするが、まぁいい。
 挨拶もそこそこに俺はホテルのトイレに向かい、IGを使って異世界に渡り、そこから支部に繋がるIGを通って到着する。十分後といったが、実質五分とかかっていない。時間調整するかどうか迷い、どうでもいいことだと割り切ってそのままビル内を歩く。
 とりあえず紅蓮に会うために一階に降り、受付さんに紅蓮の部屋を聞くことにした。
 エレベーターを呼び出したが、エレベーターガールのあのお姉さんは居なかった。常にいるわけではないらしい。
 一階に降りると受付さんは非常に驚いた顔をしたが、何か納得したような顔をした後に何か用ですかと用件を尋ねてきた。
 俺は支部長と会う約束があると言うと、手元にあるパソコンで何かを確かめた後にエレベータを呼び出した。さきほど俺が降りてきたエレベーターとはまた違うエレベーターが降りてきて、中には例のエレベーターガールがいた。この人はエレベーターに住んでいるのだろうか。
 お姉さんに案内してもらい紅蓮の所へ連れて行ってもらう。
 紅蓮と会うのはいつも同じ会議室だ。


「お早い到着ですね」


 そう言って紅蓮は俺を出迎えてくれた。

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