異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第38節

 三人組は地下室でも奥の方に向かい、どこかへ行ってしまった。
 俺はクロ達が来るまでストレッチでもしながら時間を潰し、一通り体が解れた所で二人はやってきた。
 クロは体操服。もちろんブルマではなくジャージだ。黒をベースにファスナー部にはピンクのラインが入っている。ついでに体のラインも強調されている。
 ファットはもちろん運動着。黄色をベースに黒のラインが入っている。黄色が膨張色のため、腹回りが強調されている。


「それじゃあ二人とも、頑張ってね」


 そう言ってファットはその場に座ってお菓子を食べ始める。


「それじゃあクロちゃん、特訓始めようか」


「まずは何から?」


「まずはクロちゃんの能力について詳しく教えてくれないかな」


「私の能力ですか」


「うん。やっぱり、能力を向上させるにはどんな訓練がいいか見極めないとね」


「分かりました」


 そうしてクロの能力について教えてもらい、纏めてみた。


①クロが操る髪は炭素繊維並の強度を持ち、髪の毛一本で一キロの物を吊れる程度。千本あれば一トンの物が吊れることになる。
②伸ばした分だけ髪が重くなるため、クロ自身の動きに制限がかかる。そのため、猫のように石を投げられても避けられないため、髪で防ぐ必要がある。
③ライター程度では髪は燃えないが、バーナー程度の火力があれば燃える。
④髪を伸ばせる長さに上限はなく、直線で十キロメートル以上伸ばせた実績がある。
⑤髪を伸ばす時は毛根から伸びず、毛先や枝毛から伸ばすことができ、縮めることも可能。また任意に切り離すことも可能。ただし、切り離した髪は形を残さず消失する。


 大まかな特徴として、とにかく操る髪が強すぎるという点だ。そして、猫も言っていたが、能力者は能力が突出して強いが、生身が弱いという点が浮き彫りになる。
 クロの場合は髪自体が武器にも盾にもなるため、非の打ちどころがなさそうだが、クロ自身の身体能力が著しく弱いことが伺える。特に能力を使うとクロ自身が動けないというのはかなりのネックだ。
 特訓の方針としては二つある。
 一つは能力のみでも戦えるよう特訓。もう一つは能力だけでなく身体能力も組み合わせる特訓。
 例えば、ククや紅蓮は能力のみで戦い、ブラッドやファットは能力と身体能力を組み合わせて戦っている。猫は能力が能力なだけに両方ともこなせるみたいだ。その分類でいえば俺は猫と同じように両方ともこなせるタイプだろう。
 となると、クロはどれに向いているかという話だ。直感で言えばクロは能力のみに特化したスタイルがよさそうな気がする。遠距離から攻撃し、近距離で相手を上手く捌くスタイル。


 俺は自分の思った事をそのままクロに伝えると少し感心したような素振りで納得してくれた。
 そして、改めてクロに聞かれた。


「私の能力だけじゃなくてニーサンの能力も教えてください。私も何かお手伝いできるかもしれません」


 この申し出に俺は少し困った思いをしたが、そこは適当な能力の設定をでっちあげた。
①能力を使うには特定のイラストが描かれた紙を必要とする
②能力を使うには仮想上のエネルギーを必要とする
③起こせる現象は非常に多いため、一部の能力を再現することも可能
④自分の身体は治癒できるが、他人の身体は治癒できない
⑤能力の上限は体調で決まる
⑥物質を創造でき、創造した物を再び分解することも可能


 嘘と本当を織り交ぜて説明する。
 実際、魔術という存在を知らないこの世界の人間ならば、ありえない現象は全て能力によるものだと説明できる。居るとすれば嘘を見抜く能力や、能力を正確に言い当てられる能力、あとは俺の能力をコピーできる人間ぐらいにしか分からないだろう。
 こうやってじっくり自分の能力について説明してみてもクロは真実だとして疑わないぐらいだ。


「ニーサンの能力は支部長みたいに周りを氷漬けにもできるんですか?」


「試したことはないけど、たぶんできるよ。やってみせようか?」


「お願いします」


 紅蓮の能力はこの身で実体験しているから、それを再現するのは難しくない。
 本を手に取り、イメージを膨らませる。
 周囲を凍結させたあの能力。空気すら凍りつかせる極寒の能力。肌身に感じる死の冷たさ。


「クロちゃん、少し離れてて」


 イメージは固まった。あとはそれを形にするだけ。
 魔力を体内に巡らせ、周囲から熱を消失させる魔術を構築する。物理現象を逸脱した魔術。俺はそれを知っている。
 裏魔術。
 ロイスから教わった魔法の一つの体系。


 俺は一歩を踏み出した。

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