異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第37節

 ブラッド、猫、ククの三人は見回りに出て行き、俺、ファット、クロの三人がこの場に残った。


「ファットさんはどうしますか?」


「僕は映画でも見ながらお菓子を食べるつもりだよ」


 この人がお菓子を食べるってのは仕事上の一環なんだろうなぁ。


「分かりました。俺はクロちゃんと地下で特訓するんで何かあったら連絡ください」


「昨日の今日で訓練かい?」


「はい。ちょっと色々と思うところがありまして」


 昨日のクロとの約束を果たすためでもあるが、昨日のドーラとの試合で痛感させられた部分が多い。それは俺には戦闘経験が少ないという事だ。


「そっか。じゃあ、僕も映画はやめて君達の訓練を見学しようかな」


 そういうファットはお菓子を手放さない。きっと、食べながら見学するんだろう。


「クロちゃんもそれでいい?」


「はい」


 クロはいつも通り制服を身に纏っている。
 そういえば、クロって学校はどうしているんだろうか。昨日、今日と平日にもかかわらずこっちに顔を出している。普通なら学校で勉強しているはずだ。
 俺の場合は大学生で履修する科目もないため問題はないが、ククから聞いた話によるとクロはお嬢様学校に通っていると聞いた。なら、通信制の学校やら不登校児というわけでもあるまいに。
 俺はそのことを聞こうか聞くまいか少し悩んだ末、聞かないことにした。
 この場は本名すら呼び合わない空間。言ってしまえばオフ会のようなものだ。あまり個人情報に踏み入るのも悪いかと遠慮する形だ。


「俺は先に地下に向かってるんで」


 俺はカオスのおかげで他の皆のように着替える必要がない。好きな時にあの防具を出せるからだ。
 部屋を出て、エレベータに乗り込み地下二階のボタンを押す。
 すーっと降りていくが、途中でエレベータが止まり、扉が開く。


「あれ?」


 若い兄ちゃんが三人並んでおり、先頭に立つ男が俺を見て首をかしげる。
 この人は無能力者だろうか? それとも能力者だろうか?
 三人の男はそれぞれ特徴がある。
 先頭に立つ男はアゴヒゲを蓄えた俺より少し大柄で筋肉質な男前。
 後ろの一人は俺と同じぐらいに髪が黒く、眼鏡をかけている。
 もう一人は茶色に染めた髪をツーブロックにした男だ。


「おはようございます」


 とりあえず初対面なので挨拶はしておく。このビルにいる以上、アマテラスの人間だろう。


「おはようございます」


 男は挨拶を返してエレベータに乗り込み、残りの二人も会釈をしながら乗り込んでくる。そして扉が閉まり、動き出す。


「もしかして地下に向かってるってことは能力者さんですか?」


 眼鏡の男がボタンと俺を見比べながらそういう。


「まぁそうですけど」


 俺の返答に茶髪が反応する。


「ねぇ、もしかして例の人じゃない?」


「例のって……ああ」


 なんか噂になっているらしい。


「もしかして、支部長と引き分けたって言う新人?」


「そうそう」


 支部長と引き分けたってあの模擬戦の事か?


「ほら、この時期に新人が入るって話とブラッドさんのチームに新人が来るって話あったじゃん。両方とも同じ人だよ」


 眼鏡と茶髪は二人で話し合っている。アゴヒゲはあまり興味がなさそうだ。
 地下に到着し扉が開く。


「それじゃあ、お兄さん。またねー」


 アゴヒゲは無口に、眼鏡は会釈、茶髪は声を上げて手を振ってくる。
 地下で降りるってことはあの三人も能力者なんだろうか。

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