異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第34節

 武器を失ったドーラに留めの一撃を入れに追撃を仕掛けようとしたが、ドーラが両手を上げた。


「参った。降参だ」


 思ったよりも潔いドーラ。俺は少しだけ驚いた。
 ドーラはアーサー親衛隊の長だ。その長が自ら負けを認めるというのだ。俺がその座に居たとして、そこまで潔く負けを認められるだろうか。


「正直驚いたぞ。剣筋は素人、戦闘経験も浅い、勘も良くはない。なのに、私の攻撃の一つ一つに反応できる異常なまでの反応速度、桁外れに操れる魔力量の多さ、複数の魔術を操りながらも精度の高さ、そしてなにより人並外れた速度だ」


 褒められている部分のほとんどがカオスによるものなのだが。


「しかし、惜しい」


「惜しい?」


「それだけの強さを持ちながら、師が居ないことがだ。師を必要としない水準で強いが、師がいれば更なる高みへと辿り着けるだろうに……」


「そういうことですか」


 武術を学ぶに師は居ないよりかは居た方がいい。それは至極もっともだ。一応、俺にも師とは違うが上司としてレオやブラッドがいる。だが、その両者に俺は勝ってしまっている。
 言い方は悪いが、自分より弱い相手を師事するのも強い違和感を覚える。そういった意味ではもしかしたらファットは師事できる人間なのかもしれない。少なくとも、俺が知る限りできちんとした形で力比べをしていないのはファットだ。


「まぁいい、約束は約束だ。そこのお嬢ちゃんの面倒はうちでみよう」


「ありがとうございます!」


 俺は深々と頭を下げた。


「ついでだ。私の質問に答えてくれ」


「なんでしょうか?」


「その力をあんたは何のために使うんだい?」


 最近、この手の質問が多い気がする。
 力を何に使うのか。俺は百回聞かれたら百回同じ回答をする。


「私は私のために私の守りたい奴を守るために力を使います」


 俺の答えにドーラは一瞬だけ呆け、笑った。


「面白い答えだ。傲慢で利己的なようで利他にも成り得る。もしや、その考えでこの国を救ったのか?」


「そうです」


「なら、守りたい奴というのはそこのお嬢ちゃんも入っているのかい?」


「こいつも含めた私の家族と友人のためです」


 フランにとっては耳が痛いかもしれないが、俺はこの考えを譲る気はない。


「あんたはその力を使ってこの国を征服しようとは思わないのかい? あんたは事実上、この国で最強の戦士だ」


「興味ないですね」


 俺は肩をすくめ答えた。


「欲がないんだね」


「まぁクリスティーナ王女から爵位を授かり、土地までもらえるっていうんですから、ある意味自分の国は持てますよ」


「おっと、これは失礼。まさか、あんたが貴族だとは思わなかった」


「まだ正式には貴族じゃないんですけどね」


 そういや、もうそろそろ爵位の授与式があるころか。詳しい日取りは確認しておかないと。


「あんたはこの国に忠誠を誓えるかい?」


 ドーラは真面目なトーンで訊いてきた。俺はそれに不真面目なトーンで答えた。


「誓いませんよ」

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