異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第31節

 フランを手を握り、住宅街を駆け抜け、大通りを駆け抜け、王城に向かう道を駆け抜け、城門で夜警をしている衛兵の前を顔パスで通り抜け、そのままクリス親衛隊の兵舎に向かう。


「あれ、カンザキさん?」


 兵舎の前で聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。


「えーっと」


 確か、石組のフレデリックだ。石組の中でもイケメンだったからわりと印象に残っている。


「フレデリックか。こんな夜に外で何してるんだ?」


「それはこっちが聞きたいですよ。もしかして、隊長か副隊長に用ですか?」


「ああ、そうだ。レオの奴はまだ臥せってるんだろ? 急で悪いけど隊長の方に会えないか?」


 フランがそっと俺に耳打ちをする。


「主、なぜここに……」


「まぁ待ってろって」


「分かりました。カンザキさんを追い返したら自分が怒られますからね。案内しますから付いてきてください」


 フレデリックの後に俺達は付いていく。
 夜とはいえ寝静まる程に遅い時間でもないため、人の気配は十分にある。俺を見つけた親衛隊員が俺が来たことでちょっとした騒ぎになっているぐらいだ。
 一度は来たことがある扉の前でフレデリックがノックをし、部屋に入る。


「隊長。カンザキさんをお連れしました」


「ほう。この時間に来客とは珍しいと思ったが、カズキ殿か。カズキ殿のお国では夜更けに訪問する風習でもあるのかな」


「悪い悪い。俺の国でも非常識で無作法ってのは分かってるけどさ、ここは俺の功績に免じて目を瞑ってくれ」


「なに、ちょっとした意地悪だ。フレデリック、手が空いているならお茶を入れてきてくれ」


「了解しました」


 敬礼し退出するフレデリック。


「そこのソファーに掛けて待っていてくれ。あと少しで一段落する」


「ああ」


 俺とフランは隣り合って待たせてもらう。


「その……主? なぜココに?」


「ああ、フランが日頃から一人で鍛錬してるって聞いてな。だれか良い訓練相手がいればいいなと思ってさ」


 単純な思い付きだ。俺がクロと訓練をするようにフランも誰かと訓練することで成長に繋がると思ったからだ。
 本音を言えば、フランの訓練相手を務めたいところだが、フランの願いは俺を守れるだけ強くなりたいってことだ。なのに俺と訓練したのでは意味がない。


「そんなことまでしていただかなくても……」


「お前が強くなってくれたら俺が安心できる。それに、フランには俺以外にも守って欲しい奴らがいるからな」


「…………」


「俺は今でも俺達の中でフランが一番強いと思ってる。謙遜とかじゃなくて、本当にだ」


 どこまで俺の本心が伝わるか分からないが、虚飾せずに思いのまま伝えてみた。


「主……」


 フランの吐息が漏れる。
 コトッ。


「あ、すみません」


 フレデリックがお茶を机に置いた音だ。
 どうやら二人の世界に入っていたらしい。周囲へ注意が全く向いていなかった。
 ロナルドが立ち上がり、こちらに歩み寄る。


「フレデリック、ありがとう。もう戻っていいぞ」


「はい」


 フレデリックは再び敬礼を見せてから退室する。


「お待たせしてすまない」


「いや、こっちから押し掛けたんだし、こうやって話を聞いてもらって助かる。それにしても、忙しそうだな」


「ああ。先の大戦で隊員の数を減らしたからな。補充しようにも人材がいない。他の親衛隊も同様に数を減らし、少ない人材を奪い合う形になっている」


「ご愁傷さまで」


 ロナルドもまた戦争時に国内に潜伏していた一人。俺が孤児院から王城に潜入したようにまた別のルートから王城内に潜伏していたらしい。
 ロナルドはクリス親衛隊の連中を地下牢から救うよう慎重に動いていた。しかし、ジェイドが強行突破し親衛隊員達を解放。その流れに便乗し、王城敷地内の魔人共を屠る集団に交じり殲滅。その後、親衛隊員達を再編成し、再び外部から襲われないように動いていた。
 勝って兜の緒を締めよを地で行っていたらしい。


「さて、本題に移ろう」


「ああ。単刀直入に頼むけど、フランの訓練相手を紹介して欲しい。今はレオも臥せってるし、他につてもないから、隊長を頼りに来たんだ」


「ほう。そのお嬢ちゃんの訓練相手か」


「誰かいないか?」


「並の使い手では相手にならないということか……よかろう。一人心当たりがある。今、紹介状を書くが、少し待てるか?」


「ああ。頼む」


「なに。レオを助けてくれた礼だ」


「助けた?」


「身に覚えがないならいいんだ」


 ああ、あの時にレオを殺さなかったって意味か。まぁ今更蒸し返すつもりもないため、忘れたままの体にしておこう。
 お茶を楽しみつつ、時間を潰す。


「待たせた。これを持ってアーサー親衛隊の兵舎に行き、親衛隊長のドーラに会うと良い」


「アーサー親衛隊?」


 なぜこの流れでアーサー親衛隊なのだろう。……いや、この流れだからか。
 アーサー親衛隊の隊員の練度は他の親衛隊員よりも高い。つまり、実力のある訓練相手がゴロゴロしているわけだ。


「場所は王城を挟んでこの兵舎と反対側だ。城の周りをぐるっと半周すればすぐ見える」


「分かった。ありがとう」

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