異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第29節

 クロに連れられシャワー室で一浴びし、着替えなおす。
 俺の方が先に出たため、このまま帰ってもいいのだろうが、なんとなくクロが出るのを待ってみた。


「カオス、クララ」


「なんだ?」


「なにかしら?」


 こういう時、いつでも話し相手になってくれるカオスやクララがいると助かる。


「さっきの訓練だけど、どうだった?」


「どうだったって何が?」


「あっちの世界の戦士と比べて強いか弱いかって話」


「そうねー。戦い自体は専門外だけど、あのククって子の合成獣ってのは私が知っている魔獣のどれと比べても規格外の魔獣だし、あのクロって子は並の魔人よりは強いわね。あなたが知っている魔人で言えばハンスに匹敵するわ」


「ああ、あのフランと戦った魔人か」


 あいつはかなり手強そうだった。なにせフランが全力を出して拮抗するレベルだ。ってことはクロはフランにも匹敵するってことか。


「でも見た目は普通の女子高生なんだよなぁ」


 見た目は綺麗だし、落ち着いた雰囲気もある。絵に描いたような美少女だ。あれで笑ってくれたら文句のつけようがなくなるだろう。


「ところでカズキ。さっきの猫ちゃんが言ってたけど、アポトーシスって組織と戦うんでしょう?」


「いや、どうだろう。結局、あの話って東京、つまり俺の国の首都の話なんだけど、かなり離れてるからなぁ。わざわざ新米の俺を呼び寄せるって可能性もないだろうし」


「でも、カズキの戦闘力ってあの六人の中じゃ一番じゃない?」


「いや、あのファットという男。まだ実力の全てを見せているわけではなかろうが、速度だけならば魔王のそれすら上回る。今のカズキでは勝てまい」


「え、マジで?」


「ああ。戦闘経験の差が大きすぎる。貴様も先の娘に講釈を垂れる暇があるなら鍛錬を欠かすな」


「……ああ」


 確かに人に言うだけ言って、自分で実践しないようじゃ説得力もないか。


「クロちゃんに訓練するなら声掛けてって言ったけど、俺の方からもお願いするかもなぁ」


「それもよかろう。あの娘と経験を積めば無駄になる事はないからな」


 カオスの言う通りだ。俺には圧倒的に経験が足りない。
 今までの俺の戦いはぶっつけ本番ばかりだった。まともな訓練は何一つしていない。


「よし、俺から頼んでみよう」


 クロに断られたら猫かブラッドに頼んでみよう。ククやファットは能力の制限的な意味で頼みにくい。それでもダメなら、フランに頼むか。あいつなら絶対に断らないだろうし。


「あ……すみません。待たせてしまいましたか」


「ううん。ちょっと火照った体を冷ましてただけだから」


 なんだろう。クロから凄く良い匂いがする。シャワーを浴びて顔も赤らんでなんだか凄く色っぽい。


「あまり見ないでください……その、恥ずかしいですから」


「ああ、ごめん……」


 見惚れていたみたいだ。


「…………」


「…………」


 互いに気まずい沈黙が訪れる。そのくせ、俺もクロも視線を寄こしあう。


「その、ニーサン。さっきのお話なんですけど、いいですか?」


「さっきの話?」


「訓練の話です」


「ああ、うん」


「その……明日、少しお時間良いですか?」


「うん、大丈夫だよ。俺からクロちゃんにお願いしようかと思ってたところだし」


「ニーサンから?」


「俺ももっと強くなりたいからね」


 こっちの世界でもあっちの世界でも戦う事は避けられないだろうし……それに、誰かを守りたいなら誰かに任すんじゃなくて、自分で助けられるようにならないといけないし。


「ニーサンは何のために強くなりたいって思うんですか?」


 クロの問いは既に自問している。そしてその答えも自分で出している。


「俺が守りたい奴を俺が守るためだよ」


「守りたい奴……」


「ああ」


 もし、カオスと出会わずに単身で乗り込んでいたら十中八九、やられていただろう。


「その中に……いえ、何でもありません」


 たぶん、クロは猫の事を思ったんだろう。
 ……猫に関しては俺もまだ答えを出し切れていない。
 俺はもうあっちの世界を軸にしている。その俺が今更、猫の……水城の事を心配するのは何か違う気がしている。


「まぁそういうわけだから。俺としても訓練相手がいてくれるのはありがたいんだ。だから、本当に気兼ねしないでね」


「はい」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く