異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第21節

 ケーキと紅茶で腹を満たした俺達は例のビルに集まった。


「おかえりなさい。二人とも」


 朝と同じように出迎えてくれた猫。


「少しは仲良くなれたかな?」


 猫は俺とクロの仲が少しは改善したかと聞いてきた。


「まぁ少しはね。ねぇクロちゃん」


「ニーサンは思ったより話しやすかったですよ」


「へぇー、クロちゃんね。呼び方まで変わるなんてかなり進展したみたいね」


「同じ釜の飯を食えば仲間って言うだろ? 一緒に食事でもすれば少しは仲良くなるってこと」


「そっか。それはとってもいいことだね」


 猫は他意無くそう言う。少しでも妬いてくれるならまだ脈もあるんだろうが……いや、この考えはゴミ箱に捨てよう。


「そういや、猫。ブラッドさん達はもう戻ってるのか?」


「うん。お昼からは実戦訓練をするってさ」


「また実戦訓練かぁ……」


「ニーサンはもうしてるから、免除だってさ。その代わり、見学だって」


「見学?」


「私達の戦い方を見て何か身になるものがあればいいなーってこと。ニーサンの能力って出来ることが多い代わりに何かをモチーフにしたものが多いでしょ? 基本、ニーサンが使ってる能力ってゲームの魔法みたいな物だし。もしかしたら、ニーサンが知らずのうちに自分で制限を掛けてるんじゃないかってブラッドさんが」


「そんなつもりはないんだけどな」


「とにかく準備して地下に集合。クロちゃんも準備したら地下においでね。汚れてもいい服じゃないとダメだからね」


「分かりました」


「あ、それとこの事務所だけど、この部屋とこの部屋につながってる部屋は全部私達が使っていいからね」


 部屋をぐるりと見渡すと、今いる大部屋とここから繋がっている部屋が四つある。うち一つが会議室のような小部屋だ。


「私とクロちゃんがあの部屋。ファットさんとブラッドさんがあの部屋。ニーサンはククと一緒であの部屋ね。荷物を置いたり仮眠を取ったり、そういった部屋だから気兼ねなく使っていいよ。ククなんか漫画とか持ち込んでるし」


「要は学校の寮みたいな感じか」


「そうね。一応、このビルの中にシャワー室もあるから、使いたいならククか誰かに聞くといいよ」


「そっか。ありがとう」


「どういたしまして。それじゃ、クロちゃんいこっか」


「はい」


 猫がクロを連れて行こうとした時、猫の視線が一点に集中していた。


「あれ? クロちゃん、そのストラップって前からあったっけ?」


「いえ、あの……これはニーサンに貰ったんです」


 そうですよねとクロは俺の方を向く。


「ああ。能力でちょっと作ったんだ。猫も知ってるだろ? 俺が宝石で金策してたの。あれと同じだよ」


「え、これって宝石なんですか?」


「あ、気にしなくていいから。別に俺の懐が痛むわけじゃないし」


 クロには余計な気遣いをして欲しくなくてあえて言わなかったけど、つい猫の前で口が滑った。


「ふーん。出会った初日で宝石のプレゼントなんて、ニーサン。少し女の子の扱いに慣れてないかしら?」


「ソンナコトナイヨ」


 アイリス達の姿が脳裏に浮かんだのでカタコトで応えてしまう。


「まぁいいけど。クロちゃん、あんまり気を許しすぎたらダメだからね。男なんて皆狼なんだから」


「えーっと……」


 クロが何と応えればいいか迷っている。


「まぁニーサンの場合は狼って言うより、臆病な狐って所だけど」


「うっさい。誰がフォックスやねん」


「英語で言ってカッコよくしてもだめだから」


「だったらお前は気まぐれ猫だよ」


「だって猫ですから」


「チッ……」


「舌打ちは良くないよー」


 まったくもってやりにくい。


「とにかく、準備して地下に行ったらいいんだな」


「うん。それじゃあまたあとでね」

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