異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第19節

 実戦訓練を終え、俺達三人はさっきの部屋にまで戻ってきた。
 ソファーにブラッドを横たわらせ、しばらくすると目が覚めた。


「悪かったな」


 ソファーに座り直し、脱力する。


「ブラッドさん、大丈夫ですか?」


 倒れたブラッドを心配していたククが飲み物を差し出す。


「ああ、大丈夫だ。ありがとう」


「もしかして、ニーサンが勝ったんですか?」


 ククは俺を見上げて尋ねてきた。


「いや、途中からファットさんがブラッドさんの相手をしたんだ。だから、俺が勝ったっていうよりもファットさんが勝ったってところ」


「そうだったんだ。ボク、ファットさんの戦ってるところってまだ見たことないんだよねー」


 いや、俺も戦いを見たわけじゃないんだけどな。アレって戦いになってなかったし。


「……まぁアレが俺の実力だ。能力を使いこなせねぇ能力者ってのは簡単に暴走すんだ。俺みたいな能力なら尚更な」


「ニーサン、ブラッド君の能力は血中成分の制御もできるって話はしたよね?」


「はい」


「血中成分はそのまま脳にまで影響がいくから、過度に能力を使うと脳が壊れる。血液操作っていうのはそういった危険な面も持ってるんだ」


「それってかなりやばいんじゃ……」


「ヤバイぜ。能力に目覚めた直後は半分廃人みたいなもんだったからな。脳内麻薬って分かるか? 分かるよな?」


「エンドルフィンとかのことですか?」


「そうだよ。まぁ他にもあるんだが、そういったもんも俺は好き勝手に作り出せちまうんだ。だから、俺はいつでもトリップ出来ちまうんだよ」


 それは……どうなんだろうか。


「おかげで今でも禁断症状が出てきちまう。性格が変わっちまうほどにな」


「性格が?」


「ああ、わりといるんだぜ? 能力に目覚めて性格が変わるやつ。 お前だって知らないうちに代わってるんじゃねぇか?」


 そういえば、水城に少し変わったとか変わってないとか言われたか。もしかして、能力に目覚めて性格まで変わってないかって気にしてたのか?


「あんまり自覚はないですけど……そういえば、み……猫とクロさんは?」


 危うく水城の本名を言いそうになる。今更な気もするが、大事な局面で言い間違えたらシャレにならないので今のうちに矯正しておこう。


「二人ともどこかに出かけたみたいですね。たぶん、ブラッドさんに言われたとおりにしてるんだと思いますよ。クロさんは真面目な人ですから」


「そっか。そういや、クロさんってどんな人?」


 俺はククに訊いてみた。


「クロさん? えーっとね……なんか漫画のヒロインみたいな人。綺麗だし、勉強できるし、運動神経だって悪くないってさ」


「なんだ? クロの事が気になんのか?」


 なぜかこの話にブラッドが食いついてきた。


「まぁ気になりますよ。まともに話せてないのはあの人だけですし」


「まぁクロは難しいやつだからな。気になるなら、話ができる場を用意してやってもいいぜ」


 ブラッドは何でもなさそうにそう提案してきた。

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