異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第15節

 翌日。
 俺は呼び出しを受けていた。向かう先は水城達が滞在しているアマテラス所有のビル。現地に向かってみると、一見すると街中にある雑居ビルという感じでちょっとだけ怪しい感じもする。
 エレベータで目的の階に上がり、通路を進んで部屋にたどり着く。ドアチャイムもないため、扉をコンコンコンと叩く。


「おはよう」


「おはよう」


 水城が扉を開けてくれた。
 中に通され、室内を見渡してみると、思ったよりも広い部屋だった。


「皆もう先に集まってるから」


「皆?」


 広い部屋に隣接した小部屋の方に案内される。小部屋には机と椅子とホワイトボードがあり、ブラッドとは別に三人いた。小柄な中学生ぐらいの少年、綺麗な黒髪ロングをしたセーラー服の女子高生、小太りのおっさん。


「猫さん、この人が昨日言ってた新人さんですか?」


 小柄な中学生ぐらいの少年が好奇心に目を光らせながら水城に質問した。


「そうよ。コードナンバー10023。今は支部長がコードネームの申請をしているから、そのうちきちんとした名前が貰えるはずよ」


「へぇー、新人でいきなりコードネーム貰えるのってすごく珍しいんじゃないですか?」


「赤坂さん、じゃねぇや。紅蓮さんがコイツの力の認めてんのさ。実際、俺も模擬戦って形だがその実力の一端は見たぜ。まだ納得いっちゃいないが、実力は確かにあるぜ」


「ブラッドさんがそこまで言うなんて珍しいですね」


「ってことは、それだけ実力がないやつが多いってことさ」


 ブラッドは椅子に座ったまま足を机の上に放り、悪態をついた。


「ブラッド君。机の上に椅子を乗せるのは止めましょう?」


 小太りのおじさんがブラッドを注意する。


「……チッ」


 ブラッドは注意され、舌打ちをしながらも足を下ろす。


「ごめんね。えーっと、コードナンバー10023じゃ長いから、ニーサンって呼ばせてもらっていいかな」


 おじさんは優しそうな雰囲気を持っていた。


「ハァ……いいですけど」


「じゃあ、僕もそう呼ぶ!」


 少年は人懐っこい笑みを浮かべていた。


「じゃあ、自己紹介をしましょうか」


 水城が思いついたように手を合わせて提案する。


「まずはブラッドさんから」


 司会進行のように水城がブラッドに振った。
 ブラッドは頭を掻きながら仕方なさそうに、気だるそうに答えた。


「コードナンバー8010。コードネーム『渇血者ブラッドサースティ』。能力は血液操作。紅蓮さんからの命令で一ヵ月はお前の面倒を見ることになった。本部は能力主義みたいだが、俺は実力主義だ。あんまり能力を過信しすぎるなよ」


 能力主義と実力主義って何が違うんだろうか。


「次は私ね。といっても、ニーサンだっけ。ニーサンは既に知っていると思うけど改めて自己紹介。コードナンバー9451。コードネームは『泥棒猫コピーキャット』。一応、アマテラスの一員として活動するときは本名は基本的に禁止だから注意してね」


「ああ、そういうこと」


 言われなきゃ、水城の事を本名で呼ぶところだった。


「次はクク、お願い」


「はい。僕のコードナンバーは9981。掛け算の九九からククって呼ばれてます。能力はブラッドさんと同じタイプの特殊血液タイプ。簡単に言うと自分の血と動物の血を混ぜ合わせて一時的に使役できる動物を作る能力です」


「ごめん。ちょっと分かりにく」


「やっぱりそうだよね。ちょっと待って、今見せるから」


 ククは立ち上がり、ポケットから銃を取り出す。


「ああ、これは本物の銃じゃないから安心して」


 そういいつつ、ククは銃に赤い弾を込める。


「この弾には僕の血が入ってて、こっちの弾は使役したい動物の血、これは犬の血だね。で、引き金を打つと僕の血と犬の血を同時に射出して、僕の命令に従う動物を生み出すってわけ」


 ククは床に向かって銃の引き金を引くと本当に血液が射出され、それが床に血だまりを作り、その血溜だまりは蠢きながら形を成していき、柴犬になった。


「今の僕の力だと血液は三種類まで混ぜられるんだ。一発目は僕の血で固定だから、あとは違う動物同士の血を掛け合わせて、合成獣っていうキメラを作るんだ。支部長に頼んで合成に拳銃の銃でコードネーム『合成銃キメラ』で申請を出してもらってるんだけど、まだ不十分だからって許可が下りてないんだよね」


 ククは肩を落としがっかりとして見せる。


「ここにいるメンバーではククはニーサンの次に新入りだから仲良くしてあげてね」


「ああ、分かった」


「次はファットさん」


「僕のコードナンバーは2929。コードネームは体の脂肪に遊び戯れると書いて『脂肪遊戯ファット』。能力は代償系能力の一つで脂肪を代償に人並外れた運動力が使えるってもの。ちなみに趣味は格闘技と映画鑑賞。よろしくね。ニーサン」


「よろしくおねがいします」


「ファットさんはアマテラスの中でも古参で戦闘任務や教練任務、国外任務の経験もあっていろいろ知ってる人だから聞いてみるといいよ」


 確かにコードナンバーを聞いた時にやけに若い数字だとは思ったけど、この中では一番の経験者ってわけか。


「次はクロさん。お願いします」


 あの女の子、クロっていうのか。


「コードナンバー9653。能力は身体操作系の一種の頭髪操作」


 それだけで自己紹介は終わった。


「クロって人見知りする子だから。気を悪くしないで。まだ自分の能力とか異能力とか、あんまり受け入れられてないの」


「そういうことか」


 俺は自分の能力云々の前にあっちの世界で色んな体験をしたから、自分の能力を受け入れる受け入れないって段階をすっ飛ばしたからな。最近は現代でアマテラスって組織があると知った時は少しは驚いたが、水城が能力者だって知った方が大きかったし、普通じゃなかったからな。


「最後はニーサン。お願いね」


「ああ、えーっとコードナンバーは10023。コードネームはまだ申請中です。能力は自称ですけど具現家系の能力で、できることは身体能力向上や火や水、剣や鎧、あとは空間も作ることができます。一昨日アマテラスの事を知ったばかりで、まだ分かんない事が多いですが、よろしくお願いします」


 まばらな拍手で歓迎される俺。


「これから一ヵ月はブラッドさんをチームリーダーとして、私達六人でチームを組むよう支部長から任務が与えられました。教練任務なのでお仕事です」


「というわけだ。俺とファットさんを除いて、この場にいる連中は全員が9000番台以上だ。自分の能力すら使いこなせないで実力を発揮できねぇ奴は無能と変わらねぇ」


 相変わらずブラッドは口が悪いが、ブラッドがいう能力主義と実力主義の意味がなんとなく分かった気がした。


「やることはたくさんあるが、まずは自分の力を使いこなす事だ。クク、お前の能力は血の組み合わせでどんな性質を持つキメラが作れるのかのリストアップと使役時間を調べろ。クロ、お前の能力は俺の能力に似てシンプルに強いから、応用の幅を探れ。猫、お前は自分の能力条件をもっと正確に測れ。これは支部長からの注文だ。それと、ニーサンはとにかく能力の幅が広すぎる。暫くは実戦形式で俺とファットさんと戦え。一応、俺はお前らの上司って形になってる。何か質問があったら聞きにこい。以上だ」

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