異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第13節

 無自覚に創造した空間も時間を経て元に戻り、今は施設内にあるミーティングルームのような場所に移っている。面子は支部からここに来るときに車に乗っていた連中だ。


「さてと、神崎さんの能力の調査は終わりました。詳しい調査は時間がかかるので、今は神崎さんの能力について分かる範囲でまとめていきます。水城さん、電気を消してください」


 水城が照明を消し、プロジェクターで先程の戦いの映像が流される。


「まず、神崎さんの能力は『創作具現化リアリゼーション』。多種多様な現象を起こし、一見すると複数の能力を持っているようにも見えます。能力条件は開いた本に触れる事。ただし、一度発動した能力はしばらく持続するようです。また、剣や鎧、マントのような質量体も創造できることが確認できています」


「俺も見てたけど、アレって能力って言っていいのか? こいつ一人で数百人、下手したら千人以上の能力者と同じ能力が使えるってことになるぜ?」


「そういうことになるでしょう。能力の特異さ、汎用性、実力、新人としては破格です。また、このシーンを見てください」


 映像には霜が降り、視界が悪くなっているが、そこに俺と紅蓮が映し出されているのが分かる。ちょうど、紅蓮がマカハドマとかいう技を使った瞬間だ。そして、数秒後に俺と紅蓮が消えているのが分かる。


「この瞬間、私と神崎さんはこの空間から消失しています」


「それってどういうことだよ?」


「神崎さん本人にも分かっていないようですが、どうやら能力によるものだと思われます。この映像で私達が消えている間。別の空間に居ました」


「別の空間?」


「そう。どう説明したらいいか分かりませんが、西洋の中世のお城のような空間に私達は居たのです。同じ位置に居るにもかかわらず異なる空間、そうですね。異空間といって差し支えないでしょう」


「異空間?」


「希少能力の一つに空間系能力者、俗にいうテレポーテーションを使う能力者がいます。他にも空間系能力者がいる可能性は示唆されてきていましたが、神崎さんの能力はそれも含んでいるのかもしれません」


 空間系能力者。たぶん、俺の本当の力はそれに分類されるのかもしれない。


「それで、コイツをどうするんだ? 能力そのものの全容は分かってない。この平和ボケした日本で『戦い』を知っていて戦闘能力も新人離れしている。希少能力と扱われてる空間能力すら使える。聞いた話じゃ、自分で金すら稼げるらしいじゃねえか。どうやって管理するんだよ」


 ブラッドは口は悪いが的確に指摘している。俺自身を客観視すれば、ブラッドの言う通り手に余るだろう。だが、俺の目の前でそれを言うのは歯に衣着せぬレベルじゃないんじゃないか。


「……確かにその件に関しては君の言う通りです。短い時間ですが、彼の性格は少しずつ理解もしたので、異端者達の側に付くとも思えませんが……」


 異端者達?」


「すみません。その異端者ってのは何ですか?」


「私達みたいに能力者を管理する組織に属していない能力者達の総称だよ。日本ならアマテラスに属していない能力者。アメリカならロードに属していない能力者のこと」


 俺の質問には水城が答えてくれた。


「異端者達も何か組織に属してたりしないのか? 犯罪組織みたいな」


「小さな規模の組織に属してはいる人達もいるみたいだけど、私達みたいなアマテラス程じゃないよ」


 そんなもんなのか。


「もともと自分のために能力を使う人達だからね。何度か小さな組織同士が繋がって大きな組織になろうってした事もあったらしいんだけど、纏める人がいなかったらしくて、結局分裂して元に戻ったりね」


「悪のカリスマが居なかったってわけか」


「そうだね」


 でも、逆に言えば纏められる人間がいれば異端者達の組織が出来上がる可能性も十分あったってことか」


「そういえば、能力同士が戦ったとしてそういった事が世間に出回らないのはなんでだ?」


「それも複雑な事情があるらしいよ。私達にとっても、異端者達にとっても」


「その説明は私がしよう」


 紅蓮が説明を買って出た。


「まず、私達アマテラス側の理由としては能力者の存在を世間に知られると現状の社会システムを根本的に変えなくてはならなくなる。そのための費用が大きすぎるという点だ。アマテラス内にも能力者の存在を公にするかどうかの議論は上がっている。だが、結局は公安、ひいては日本政府が許さない。他国からの圧力もあるが、元来より日本人は保守的だからな。大きな事件が起きるまでは能力者の存在を秘匿するだろう。そのために様々な根回しがされている。そして、そのための資金提供をアマテラスも受けている。例えば、私達に支払われている給料やボーナスといった財源がそれだ」


「要するに社会システムを維持するために日本政府が色んな手を使っていて、その手の一つがアマテラスってこと?」


「そういうことです」


「じゃあ、異端者達は?」


「異端者達の理由としては確たるものはないですが、もし仮に世界が能力者の存在を認知したとしたらどうなるかという点で考えシミューレションしました。その結果として、莫大な費用と時間の末、能力者の存在に適応した社会となると、異端者達の多くは駆逐されます。何故なら、ほとんどの能力者が軍隊に勝てないからです。また、私達能力者も表立って行動できます。すると、あっという間に異端者狩りは終わるとの結果が出ました」


「なるほど。確かにそうだ」


 どれだけ強い能力者でも現代兵器には簡単には勝てないってことだ。


「軍を動かすには世間の注目を集め、能力者の存在を公にする可能性がある。それに比べ私達は表向きは一般人。銃器を持たなくても戦える人目を集めない存在。だから、異端者達の処理は主に私達に回ってくるのです」


「それで、世間に能力者の存在が表立たないようになってるわけか」


「そういうことです。そういった点で言っても神崎さんのあの異空間の能力は戦闘の痕跡を公にしない効果が期待できるので、今後は神崎さんに異端者との戦闘は全てあの空間で行ってもらうよう命令がいくかもしれませんね」


 俺も戦闘任務に着く事がありそうな予感。


「今後、神崎さんの扱いは早急に決めますが、それまでは保留という形で。しばらくは神崎さんをブラッド君に預けます。それと水城さんには神崎さんがアマテラスに慣れるまでコンビを組んでもらいます。これも暫定ですが、一カ月としましょう」


「それって、俺はどうすればいいんでしょうか? こっちに引っ越せってことですか?」


「いえ、その心配には及びません。確か、神崎さんはK市に住んでいましたよね。その市内ならばこのビル程ではないですが、アマテラスが所有しているビルがありますので、そちらにお二人が向かってもらう形となります」


 ってことは、またしばらくは水城と一緒か。


「しばらくは一緒だね。神崎」


 水城に笑顔を向けられた俺は顔をそむけた。

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