異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第9節

 朝食も摂り終わり、着替えて再びアマテラスの支部に向かう。道中の交通手段はタクシーで、領収書を切ってもらってる当たり、経費として落ちるっぽい。


「さてと、それじゃあ支部長に会いに行きましょうか」


 ビルに入り、受付嬢と簡単なやり取りをし、エレベーターが開く。


「おはようございます」


 昨日の万能エレベーターガールさんだ。


「おはようございます」


 この人も能力者だったりするのかな。
 そんなことを考えつつ、俺と水城はエレベーターに搭乗する。
 そういえば、このエレベーターってどうやって動いてるんだろう。
 前回乗るときは気にしていなかったが、このエレベーター。普通のエレベーターとは違い、階数の表示もなく、行きたい階数を押すボタンもない。体感で今何階かと聞かれれば、十階以上と答えられるが、具体的に何階かは分からない。
 内部操作ではなく、外部操作によって動くのだろう。もしかしたら、あの受付嬢に用件を伝えると、それに見合った階数に連れて行ってくれるシステムなのかもしれない。なんでこんな回りくどいをするのか。まぁ外部からの攻撃を警戒している以外に理由が思い当たらないけど。
 目的の階に到着する。


「クララ、ここが何階か分かるか?」


「十五階よ」


「なんで分かるんだ?」


「そこの植物が外から見えたからね」


 扉が開いている部屋をチラリと見ると確かに観葉植物が窓際に置かれている。クララは記憶力もいいけど、洞察力とか観察力とか、そういう感知能力が優れている気がする。
 万能エレベーターガールさんに昨日と同じ一室に通される。
 室内には赤坂以外にも何名か居り、既に席についていた。


「神崎さん。おはようございます」


「おはようございます。えーっと……」


「彼らは立会人、あるいは証人とでも思ってください」


「……ハァ……」


 言っている意味は良く分からないが、言外に気にしなくていいという事らしい。
 俺は席に着き、俺の隣に水城も座る。


「では、神崎さん。アマテラスへの加入の是非について聞かせてください」


「入りますよ。色々と読んでみましたけど、待遇も悪くないですし、公務員扱いなら就活とか省けるんで」


 取ってつけたような理由だが、半分ぐらいは本心のためまんざら嘘でもない。


「そうですか。我々は神崎さんを歓迎いたしますよ」


 赤坂はニッコリと笑い、俺を迎え入れてくれた。


「さて、神崎さんには短い期間ですが、彼の下で指導を受けてもらいます」


 赤坂が彼と言う人物。


「アマテラスのルールの一つにコードネーム。つまり、任務上における呼び名というものが存在します。彼のコードネームは渇く血の者という意味で『渇血者ブラッドサースティ』。略称はブラッド。一時的ですが君の師とも言える人物です。名前と顔ぐらいは覚えておいてください」


「覚えておいてくださいって言われても……」


 赤坂が言うブラッドという人物。白髪に色白、グラサンをかけていてパンクファッションをしている。年齢は分からないが、俺とあまり変わらないか少し上ぐらいだろうか。


「赤坂さん、こいつのデータってまだ取ってないんでしょ? それで俺に付けるってのも順番が違いませんかねぇ」


 少し口調が荒っぽく、横柄だが、通る声をしているなと思った。俗に言うイケボだ。


「そのデータ取りも君を交えてするつもりです」


「はぁ? 聞いてませんよそんなこと」


「彼が加入するかどうか決まる前からデータを取ることを決めるのもおかしな話でしょう? それこそ君がいう順番が違うというものです」


「……チッ」


 あ、舌打ちした。


「ではいくつかこちらの書類に記入してください。もちろん、プライバシーに関わる事ですので業務上で使う以上の事はしませんのでご安心を」


 記入欄には氏名やら住所やら一般的な項目がある。そして、一際特異なのが能力名だ。


「これって後から変更したりできますか?」


「できますが、意味なく頻繁に変更されると注意されます」


「まぁそれもそうか」


 能力名に『創作具現化リアリゼーション』と記入する。あとは埋められない欄を除き、全て埋めて赤坂に返す。


「ちなみに赤坂さんのコードネームって何なんですか?」


「私のコードネームは『紅蓮ぐれん』ですよ」


「紅蓮ってやっぱり、炎を使うんですか?」


「それはどうでしょうか。いつか見る機会があるかもしれませんよ」


 赤坂は笑ってごまかした。


「では、ご足労ですが神崎さん……すみません。神崎さんのデータ収集のため、場所を移しましょう。他の方々も立ち会いありがとうございました。ご興味がある方はこのまま付いてきてください」


 赤坂の宣言に伴い、立会として呼ばれた人間の半数以上が席を立つ。残ったのはブラッドを除けば三人か。よっぽど俺に興味が無いらしい。別にいいけど。


「では、移動しましょうか。車を用意させますので、少々お待ちください」


 そういう赤坂、もとい紅蓮。


「水城にもコードネームってあるのか?」


「あるよ。私のは自分でつけたんじゃないんだけど、泥棒猫って書いて『泥棒猫コピーキャット』っていうの。でも、皆は猫って呼ぶけどね」


「ああ、なるほどね」


 能力をコピーをする所からきてるのか。それに、水城って犬よりは猫っぽいし、なんとなくわかる気がする。


「あのブラッドさんはどういう人なの?」


「あの人はブラッドさん。髪が白かったり、サングラスをかけてるのは能力の影響、神崎の両手みたいな感じね」


「なるほど。コードネームに血って単語が入ってるってことは血に関わる能力者ってこと?」


「そうよ。体内、体外に関係なく自分の血液なら操れるの。能力に癖があるから、私の能力でもコピーしづらい能力なの」


「へぇ」


「アマテラスには一万人ぐらいの能力者がいるんだけど、上位の約千人にしかコードネーム、というかある意味称号や二つ名は与えられないの。だから、コードネームを持ってる人はそれだけ実力があるってこと。逆にコードネームがない人。神崎みたいに新しく入った人はコードナンバーって言って番号が割り当てられるの。だから、コードネームを持ってる人はネームド、コードネームを持ってない人はナンバーズって呼ばれてたりするの」


「ってことは、ナンバーズの連中はネームドになることが目的になるのか」


「そうだね。ネームドになると待遇もそれなりに良くなるしね」


 そこで赤坂が席を立った。


「お待たせしました。ただいま車の用意が出来ました」

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