異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第7節

 部屋に戻り、再び冊子に目を通す。
 水城は水城でのんびりとテレビでも見ながらスマホをいじっている。
 冊子の内容によると任務は国内の治安維持として異能力者の発見、保護、捕縛と外国からやってくる異能力者の排除。それと、異能力者の存在が公にならないよう隠蔽工作もこの中に含まれている。アマテラスの活動の大半を占めるのがこの部分らしい。


「水城、異能力者同士の戦闘って見たことあるか?」


「あるよー。能力者によって戦い方がバラバラだから、一概にこういう戦闘だよって言えないんだけど、火とか雷を撃ち合うようなバトルから陣取り合戦みたいなバトルまで色々だよ。私の能力は結構レアらしいから、戦闘任務ってあんまりないんだけどね。それでも、誰かの代役で戦闘任務に就くことはあるよ」


「……やっぱり、人死にとか出るのか?」


「……まぁね。異能力者って殺傷能力が高い能力を持ってるのに耐久力って普通の人間と変わらないからね。頑丈な能力を持ってる人は別だけど、大抵は先に攻撃したもの勝ち。専守防衛なんて私達の世界じゃ無理なの」


「……まぁ戦いだもんな」


「他人事みたいに言うわね」


「本当に他人事だったら良かったんだけどね」


 あっちの世界でも少なからず人死には出た。ゲイリーの部下も数人は無くなったし、クリスの親衛隊の人達だってかなり数を減らした。石組の連中は生き残ったみたいだけど、同僚がかなり減ったと言っていた。こっちの世界で言う告別式も近々あるらしい。もちろん、俺も参列するつもりだ。


「やっぱり、神崎って少し変わったよね。たうbん、根っこは変わってないんだと思うけど……もしかして、能力の影響?」


「そう……だね」


 もとをただせば全ての始まりはこの能力だ。


「神崎の能力って実際の所どうなの? どうせアマテラスに入る時には開示しなきゃいけないんだしさ。ちょっとぐらい教えてよ」


「……そうだな。水城にならいいか」


 俺はIGBを取り出し、本を構える。


「昔さ、こういうアニメがあっただろ? 本を持って呪文を唱えたら魔術が使えるってやつ」


「ああ、あれね。神崎好きだったよねあれ」


「今でも好きなんだけどね。まぁあんな感じで魔法が使えるんだ」


 俺はあえて嘘をついた。


「俺の能力条件は本を持つこと。そして、呪文を唱えること。こうやってね」


 俺は本を手の平に乗せ、指で本の上側を抑え、特定のページの所で固定する。この時、指をIGBに埋没させる。


「たぶん、水城なら分かるだろうけど、俺の能力が発動してるの分かるだろ?」


「ええ。ってことは神崎って漫画みたいに魔法が使えるの?」


「魔法っていうより、魔術だけど」


「神崎ってそういう所細かいよね。でも、呪文って言ったってなんでも使えるわけじゃないでしょ?」


「何でもって訳じゃないけど、かなり色んなことができるよ。火を出したり、水を出したり、身体能力を強化したりね」


「本当!?」


「ああ。こんな感じで。炎よ!」


 呪文名は適当だ。実の所、詠唱なんて本当は必要しない。詠唱はあくまで補助要素だ。


「うわ。本当だ」


「水よ!」


 手のひらからジョボジョボと水が流れ、空となったグラスに水が満たされる。


「まぁ生み出した水もこんな風に回収できるんだけどね」


 そういって生み出した水を魔力に還元してカオスに吸収させる。


「うわ、すごい……」


「能力名は……そうだな。能力名はシンプルに創作具現化リアリゼーションで」


「……能力名はともかくとして、それってかなり凄いんじゃないかしら。本を手放したら、能力は使えなくなるの?」


「手放しても少しの間なら使えるよ。身体強化系なら持続するしね」


「なら、神崎一人で異能力者数人分の働きができることになるかも」


「それは言い過ぎだろ」


「ううん。攻守兼ね備えた能力者って本当に数が少ないんだよ。それに神崎の能力って戦闘以外でも使えるでしょ?」


「何でそう思う?」


「だって、その能力で宝石を生み出したんでしょ?」


 ああ、そう解釈されるのか。


「まぁね」


 水城の勘違いに便乗する。


「宝石よ!」


 もはや呪文でも何でもないただの命令だ。それでもカオスは俺の指示に従って魔力が込められていない魔石を俺の手のひらの上に出してくれた。


「やっぱりね。じゃあ、神崎が身に着けてた宝石とかも本当はイミテーションじゃなくて、神崎が出したものだったの?」


「まぁね。結局、俺には似合わないってことが分かったし、今ではもう外してるけどね」


「やっぱり、神崎の能力って応用の幅が広そうね。それに上位能力がどうなるのか気になるし」


「ん? 上位能力?」


「あ! ごめん! 今の忘れて!!」


「いや、忘れてって言っても……」


 仮に俺が忘れてもクララが全部覚えてるだろうし。


「あー。参ったなぁ。神崎って安心感っていうか、絶対に危害を加えてこないって分かってるから油断しちゃった……」


「それって褒められてんのかな」


「それは自分で考えなさい……まぁいいか。どうせ、アマテラスに入れば知ることになるんだし」


「その上位能力ってやつか?」


「ええ。能力って発言した段階をレベル1とするなら、それを使いこなすうちにレベル2に行くの。例えば、今まで触れた物しか燃やせなかったのに、触れなくても離れた物を燃やすことができるようになったり、遠くまで見通せる千里眼を持ってる人が透視能力まで身に着けたりとか、そういった能力の向上の事」


「マジか!」


 ってことはもしかして、俺の能力で言えば同じ絵でしか繋がらないって条件が、緩和されたり、俺以外の生物をあっちの世界に連れて行けたりするって可能性があるのか!


「まぁ全員が全員、上位能力が発言するってわけでもないんだけどね。これ以上のことが知りたかったらアマテラスに入ってからの話よ」


「マジかぁ。でも、それだけでもアマテラスに入る価値があるな」


 まだ可能性の話だが、アイリス達をこっちの世界に連れてこられる……それはとても魅力的だ。


「決めた。俺、アマテラスに入るわ」


「え! 今の話だけで決めたみたいなノリやめてよ! 私がうっかり話したのがバレるじゃない!」


「ああ、分かった。そこらへんは適当にごまかすからさ」


 もうアマテラスに入る事を決めたならこれ以上冊子を読む必要もないか。
 水城に聞こえないよう、クララに声をかける。


「クララ、適当に冊子のページをめくるから無いよう覚えておいて」


「仕方ないわね」


 冊子をパラパラとめくってクララに記憶させる。これでいつでもクララから内容が聞けるだろう。
 となると、時間的余裕ができた。折角スイートルームに止まってるんだ。満喫しないと。


「えーっと、スイートルームのサービスって他に何があるかなーっと」


「あ、神崎。これから遊びに行く気でしょ! 私も行くんだから!」


「分かったって。でも、買い物は俺がつまらないから他の所にしようぜ」


「もー。やっぱり神崎って自己中なんだからー」


 胸に刺さった棘が痛む。


「ほらほら、結構ホテル内の施設っていっぱいあるんだぜ。ちょっと外に出よう」


「仕方ないわね」


 そうして、俺と水城は眠気が襲うまで夜の街で遊んできた。
 ちなみに、帰ってきてからは二人でゴンゴンと朝まで眠っていた。おかしなことは無かった。クララがそう言ってくれた。

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