異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第6節

 ホテルの一階に下り、買い物を始める。といっても、店の種類は主に服飾関係でどうしても俺が水城についていく形になる。
 こういった大人っぽい店は場慣れしていないから、強い違和感を覚えるが、水城は慣れている感じで色んな店を巡る。
 水城が服選びに夢中になってる間、店から目の届く範囲のベンチに腰を下ろす。
 服飾関係以外の店もないかなと視線を迷わせていると、白髪の老人が声をかけてきた。どうやら外人のようだ。


「お兄さん。尋ねたい事があるのですが、英語は分かりますか?」


 流暢な日本語だ。日本語で英語が分かりますかって質問もおかしいなと思ったが、どうやら通訳の能力が発揮されているらしい。


「僕の言葉は通じますか?」


 変に英語を使わず、通訳の力を信じてそのまま日本語で尋ねてみた。


「綺麗な発音ですね」


 老人はにこりと笑ってくれた。


「ありがとうございます」


 俺は照れ笑いをしながら、老人に何の用かと尋ね返した。


「この周囲で十歳ぐらいの女の子を見ませんでしたか? 私の孫なんですが、はぐれてしまったようで。この子なんですが」


 老人はスマホの画面に写真を表示させ見せてくれた。


「お孫さんですか」


 エレベーターから降りてこの店に来るまでのルートを思い出したが見た覚えがない。


「カズキ、その子ならさっきのロビーで椅子に座ってジュースを飲んでいるのを見たわ」


 クララが助け船を出してくれた。


「さきほど、ロビーでこの子を見かけましたよ」


「本当ですか。この周辺ではぐれたのでまだここにいるかと思っていました」


「確か、椅子に座ってジュースを飲んでいたと思いますよ」


「ありがとう。お兄さん。助かりましたよ」


 老人は手を差し出してきたので、俺は握手で応えた。


「いえいえ、どういたしまして」


 老人は礼を言いつつロビーに向かっていった。


「カズキって英語できたっけ?」


 水城が戻ってきた。


「出来るわけないじゃん」


 俺は当然の如く応えた。


「でも、あのお爺さん。英語でお礼を言ってたみたいだけど。日本語で話してたなら日本語でお礼を言うと思うんだけどな」


「まぁ向こうさんの作法でしょ。あんまり気にしなくていいよ。それより、そろそろ夕食の時間だしレストランに向かおうぜ」


「んー、そうだね」


 レストランは最上階に位置し、スイートルームを使う俺達みたいな客には俗に言うVIPルームのような特別室を利用でき、そこで食事ができる。
 コース料理で色々と振る舞われるが、貧乏舌な俺にはそれの良し悪しは分からない。毎度の事、思う事だが価値ある物は価値の分かる者が利用するのが一番建設的だと思ってしまう。
 料理もそうだが、飲み物も望めば高級な酒類も手に入る。ただし、俺は普段から酒は飲まないし、水城も酒は飲まないようだ。


「カズキはアマテラスに入る気ある?」


「待遇もいいしね。今は入ってもいいかなーって思ってる」


 月に一回、支部に行かなきゃならないのは面倒くさいが俺の能力であれば距離は関係ないしな。あとは具体的な任務の冊子に目を通して最終的な結論を出すつもりだ。


「アマテラスは実力主義的な所があるから、強い能力があればそれだけ待遇もよくなるんだよ」


「ってことは水城って結構待遇いいんじゃない? 異能力者の発見ってかなり貴重な能力なんじゃ」


「そうね。戦闘系の能力者に比べたら危険は少ないし、能力者を発見、交渉まで進められれば、たまにこうした特典もあるしね」


「水城の能力って具体的にはどんな能力なんだ?」


「まぁ神崎なら話してもいいか。別に支部長もそこまで強く禁止しているわけじゃないし。私の能力は『模倣』。他の能力者の力を使うことができるわ」


「……それって最強じゃね?」


「そう思われがちだけれど、どんな能力者にも能力を使う上での条件があるの。私の場合、それがちょっと難しいってことかな」


「なんか異能力バトルでよくある設定みたいだな。なんだっけ、限定条件とか制約とか」


「ええ、懐かしいわね。神崎の家で読んだことあったっけ。でも、日常的にそういうのってあると思わない? 火を起こすには燃料がいるし、テレビを付けるには電気がいる。能力だって常に使い続けていたら、身が持たなかったりするかもしれないでしょ? 中には本当にそういう能力者がいるかもしれないけど、都市伝説で言えば人体発火現象とか。あれだって、もしかしたらオンオフを切り替える条件が無い人が暴走して自分を燃やしちゃったのかもしれないしね。だから、条件って安全装置みたいなものって支部長も言っていたわ」


「安全装置か」


「あったら少しだけ面倒くさいけど、無かったらとても危ない物。そんな感じのものが能力条件」


「なるほどね。じゃあ、水城の能力条件って何さ?」


「さすがにそこまでは教えられないかな。もし知りたかったらアマテラスに入ってよ」


「それは追々ね」


 性急に答えを出す必要もない。
 俺達は食事を終え、部屋に戻った。

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