異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第2節

 地元から離れた都市部に連れてこられた俺は、大きなビルに備えられた駐車場で若い刑事と中年の刑事に挟まれる形でビルに再び連行される。
 ビルに入ると小さな受付とエレベータが見えた。他に目につく物がないかと周囲に目をやると、どうやらここは土足厳禁のようで、靴を脱ぐ必要があるらしい。
 二人の刑事を真似て靴を脱いでスリッパに履き替える。


「こんにちわ。今日はどういったご用件でしょうか?」


 受付のお姉さんがおっとりした口調で挨拶をしてくる。


「こんにちわ。公安の秋月です。支部長にお取次ぎ願えますかな?」


「秋月様ですね。少々お待ちください」


 しばし待機。


「確認が取れました」


 ピンポーンという独特の電子音が鳴り、エレベータが開く。初めてエレベーターガールを見た。


「支部長は十五階におります。後は彼女が案内いたしますので、エレベーターにご搭乗下さい」


 なんだか随分と堅苦しい感じがして別世界な感じがする。異世界という感じはしないけど。
 俺達はそのままエレベーターに搭乗し、十五階に向かう。
 エレベーターを降り、廊下を進み、一室に俺は通された。
 中はドラマとかで良く見るような会議室で木製の机が並べられ、黒革の椅子が何脚もあった。入口と反対側の壁はガラス張りで陽光が差し込んでおり、その逆光の中にスーツを着た男が待ち構えていた。


「ようこそ。神崎さん」


 肩幅ががっちりとしたガタイの良い四十代程の男。他に人もいないため、俺の事を呼び寄せた支部長なる人物がこの男なんだろう。


「あなたが俺の事を呼んだ支部長さんですか?」


「はい。赤坂恭一と申します」


 赤坂と名乗った男が差し出した手に握手で答える。


「俺は神崎一樹……ってのは、そっちに知られてるんだっけか。それで、えーっと。俺は何のために呼ばれたんですか?」


「少し長い話になります。どうぞ、おかけになってください」


「……じゃあ、失礼します」


 黒革張りの椅子は座ると独特の音を立てる。座り心地が良いか悪いかは微妙な所だ。


「まずは私について説明しましょうか」


「お願いします」


「私は日本特殊能力者組織『アマテラス』、英語で言えばJapan Unique Skiller Organization "Amaterasu".通称はアマテラスという組織の一員、そしてこの地方支部の支部長でもあります」


「特殊能力者組織ですか?」


 なんとも陳腐な組織名だ。


「はい。神崎さんと同じように特殊能力、日本人同士の場合は神業と呼ぶ力を持つ人達を集めた組織です」


「……特殊能力? 神業?」


 一応、とぼけてみせる。


「はい。この先は彼女が居た方が話が早いでしょう。すみませんが、彼女をここへ連れてきてください」


「畏まりました」


 俺をこの部屋まで案内してくれたエレベーターガールだと思っていた人が退室する。


「えーっと、俺をわざわざ連れてくるってことは大事な話……なんですよね?」


「そうです。順を追って説明しますので、もう少々お待ちください」


 嗜められてしまった。それにしても日本特殊能力者組織か……こういう名前って大概が国とか政府とかそういった公のネーミングセンスっぽいな。略称とかつけるあたり、それっぽい。
 コンコンコン。
 ノック音で扉の方へ視線を向ける。さっきの女性が連れてきた人物は俺も見知った人物。
 水城愛理だった。

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