異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第267節

「あの魔力を周囲から奪う能力って任意で切り替えられるのか?」


 カオスに吸魔石を渡した後に尋ねてみた。


「ある程度は制御も可能だ。だが、そもそも魔力を集めるのは貴様で言えば呼吸と同義だ。魔力が不足すれば周囲から奪うしかない」


「なら、魔石があればわざわざ周囲から集める必要はないんだよな」


「そうだな。濃度の薄い大気中の魔力より、貴様が言う我らの核となる魔石から集める方がよほどよいだろう。先ほど受け取った我が一部は潤沢な魔力を内包していた。これならば今しばらくは供給を断っても平気だろう」


「なら、しばらくは我慢してくれ。カオスの力で俺の仲間が倒れちまったんだ」


「よかろう」


 これでカオスを携帯したままジェイドの所に戻っても大丈夫そうだ。


「ところで、カオスってどんなことができるんだ?」


 ここがかなり重要だ。


「そうだな。貴様が持つ魔宝石の力を限界まで上げることができるぞ」


「え、そんなことができるのか?」


「魔宝石の中には魔人の意志が眠っているのだ。我がそやつらを叩き起こし、力を出させるだけの話。造作もない」


「なら頼む!」


「では、しばし待て」


 そう言ってカオスは黙り、一分程が経過した。


「終わったぞ」


「早いな」


 俺は試しにと無属性魔術を使ってみた。手持ちの魔石はスッカラカンで吸魔石もないから、カオスの魔力を貰い受けてだが。
 適当な柱に向かって一発放ってみる。俺の意識的には魔獣を転倒させた時と同じぐらいの威力のつもりだったが、直径五十センチ程の柱の右半分が半円状に吹っ飛んだ。


「凄い威力だな」


「我の魔力を使ってこの程度とは……」


 カオスの口振りからして少しガッカリした印象を受ける。


「やっぱり、カオスの魔力って他の魔力と違うのか?」


「全く違う。貴様が今まで使っていた魔力が弱すぎるのだ。炉に炭をくべず、枯草ばかりを入れているような物。本来の力の半分も出しておらぬわ。逆に今のは我の魔力では火力が高すぎ、炉の能力を超えておるということ。もっと量を減らしても同じ威力の魔術を使える」


「ならこっちはどうなのさ」


 俺は力を高める魔宝石を行使し、超重量メイスを持ってみた。すると、今まで体感で二十キロを超えていたように感じていたのが、数キロ程度、鉄パイプでも持っているかのように軽い。


「すごいな。さすが魔神カオスだ。他にも何かできるのか?」


「では、少し姿を変えて見せよう」


 カオスがそういうと、カオスの魔宝石がグニャグニャと俺の掌の上で動き始め、一本の剣に変化した。150センチを超える幅広の両刃の剣。西洋剣独特の鍔に凝った装飾がされており、西洋ファンタジーにおける剣と魔法の剣を象徴するような俺の心をくすぐる一振りだ。


「カオスが剣になっちまった……」


「我が体の一部を取り戻したおかげだな。我が武器の形態を取り、攻撃した物から魔力を奪い取ることができる」


「ってことは、魔王の魔力も?」


「もちろんだ」


「消撃の力も?」


「奴らが使う攻撃を無力化する力のことか?」


「ああ。俺の攻撃も一発目は通ったんだけど、それ以外は全く……」


「我を使った攻撃ならばその心配はない。その力すら奪い取って見せよう」


 これはメッチャ頼もしいな! なるほど。悦楽の王が言っていた小道具に頼るなってこういう事か。俺に必要なのは道具じゃなくて、相棒だったのかもしれない。
 この世の全ての創造主とこの世あらざる者。なんかカッコいい。


「魔剣カオスか……」


 魔王を倒すに相応しい武器だ。相応しい所じゃない。これ以上は無い。


「我が力、貴様が言う吸魔石を集めることが出来れば、より強い力を取り戻すことができるだろう」


 魔神の力を解放するため力を貸す……字面だけ見れば俺の立場が分からなくなる。それも一興か。


「それは楽しみにしておくよ」


 カオスとのやり取りで魔王戦に光明が見えた。後はカオスを振るう俺自身がどう立ち回るか。その点だけを気を付けなければならない。

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