異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第266節

 開かれた鉄扉を潜り、炎の魔術を使おうとしたが魔術が使えなかった。仕方なく現代からライトを持ち出して、室内を探索する。
 部屋は一辺が二十メートルの立方体のような形をしており、とても大きく天井が高い。床、壁、天井の全てがミルクで満たされたような乳白色で染み一つない。唯一の汚れが俺の足跡ぐらいだ。
 部屋の奥をライトで照らすと台座が設けられおり、その中央に何かが鎮座してある。
 歩み寄り、台座に鎮座してあるそれをライトで照らしてみる。
 黒光りした魔石だ。それも結構大きい。直感だが、魔力を吸収している源はこれだ。なんとなく俺が持っている吸魔石に似ている。ただし、大きさも光の反射具合も異なり、こちらの方が全てにおいて質が上だと分かる。
 危険が無いか確認しながら、鎮座してある魔石を手に取る。何事もなくすんなり取れた。


「ただの魔石か? 大きさからしたら魔宝石っぽいし……」


 俺の手持ちの魔宝石よりも更に一回りか二回り大きい。魔獣の魔石が大きい物でも小指の先程、魔人の魔石でも親指の先程だ。それに比べ、この魔石は握り拳か野球ボールぐらいはある。


「■■■」


「ん?」


 何か重々しい声が聞こえた気がした。ただ、強烈なエコーがかかったように非常に聞き取りづらい声だ。


「お前の声か?」


 クララやノーマンと同じで意思が残ったまま魔石化した魔人だろうか?


「――貴様」


 ノーマンとはまた違った男の低い声だ。


「お、喋った」


「貴様、この世の者ではないな」


 ギクリとした。
 初対面、まぁ面を合わしてるわけじゃないけど、開口一番にそれを突いてくること自体がコイツがただの魔人じゃないってことは分かった。


「分かるんだ」


「我はこの世の全ての根源」


「根源?」


 根源ってことは全ての始まりって意味だ。


「まるで創造主みたいな言い方だな」


「……創造主。遠からぬ存在だ」


「まるで神様みたいな言い方だな」


「神、そうだな。そう呼ばれた時代もあった」


 何言ってんだ?
 そこでふと、クララの話を思い出した。魔族に関する話だ。クララ自身はおとぎ話だと言っていたが、まさか……。


「お前が魔神なのか?」


「その呼び名を使われるのは久しいな」


 マジか。
 てっきり、ここに保管してあるのは便利な魔宝石程度のつもりだったが。まさか、魔神の魔宝石かよ。


「魔神ってことは魔族のトップなんだろ?」


 魔神の力が借りられるなら、魔王を倒すぐらいわけない。上手く事が運べば、戦わずにサニングを解放できる。しかし――


「過去の話だ」


 あっさりと否定された。


「我は力を失い、永き時を眠り過ごした」


「力を……失った? 勇者にでもやられたのか?」


「我は誰にもやられはしない。我が力を失ったのは人を創造したためだ」


「はぁ!?」


 人を創造? 魔神が魔族を創造したってんなら分かるけど、人を創造ってどういう意味だ?


「……貴様、我が分身を持っているな?」


「分身?」


 もしかしてと吸魔石と取り出す。


「それだ」


「吸魔石ってあんたの分身だったのか?」


「それは我が身の一部の結晶。それを寄こすならば、少しは力を貸してやろう」


「マジか!?」


 正直、吸魔石を失うのは痛いが魔神の力を借りられるのはデカイ気がする。能力こそ未知だが、周囲の魔力を奪い取るあの力だけを見ても確実に悦楽の王の吸魔の力を上回っている。


「貴様のような得体のしれない存在にも興味がわいたからな」


「それは助かる! なら、この吸魔石は魔神……えーっと、名前とかある?」


「名前は無い。魔人という存在は我以外におらぬからな。区別するための名等持たない」


「そっか……ならさ、俺が名前を付けてもいいか? 俺の使ってる言葉って魔人と魔神って音が同じだから、使いづらいんだよ」


「好きにしろ」


「ならそうだな……」


 マジマジと魔神の宿った魔宝石を眺める。黒く光る魔宝石は全てを内包し、混沌の象徴とも言える気がした。


「なら、お前の名前はカオスだ。魔神カオス。ほら、語呂も良いし」


「カオスか……よかろう。ならば、貴様と同行する間はその名を使ってやろう」


「んじゃ、よろしくな。カオス」


「よろしくというには早かろう。我も貴様の名を聞いておらぬ」


「ああ、ごめん。俺の名前は神崎一樹。カオスの言う通りこの世界の住人じゃない。この世界から見ての異世界から来たんだ」


「異世界の住人のカズキだな。その名、しかと覚えた」


「ああ。今度こそよろしくな。カオス」


「よろしく。カズキ」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く