異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第264節

 ジェイドの手料理を食った俺達。
 ゲイリー達は半分の人手をここに残し、残りの半分でこの街の治安維持に協力するそうだ。
 俺は俺で明日に備え、部屋の隅で自分の寝床を作ろうとしているとニールがやってきた。


「カンザキさん、ちょっといいかな」


「なんでしょう」


 箒で簡単に床を掃き、そこに毛布を敷きながら答える。


「フランは今何しているんだ?」


「……フランなら魔王に捕まってるよ」


「魔王!?」


 思わぬ単語が出てきたのか、目を白黒させながら驚くニール。


「ああ。だから、フランを助けるためにも明日は城に乗り込んで、奴を倒す必要があるんだ」


 本当なら今すぐ向かいたい所だが、疲労で体が重い。サイクリングで熱を持った体も川下りのおかげで冷めたが、疲労だけは抜けていない。


「……俺も城に連れて行ってもらえないか?」


「ニールが?」


「ああ。フランに助けられた命なら、フランのために使いたい。もちろん死ぬつもりは無い」


 ニールは失った片腕を俺に見せる。フランから聞いた通り、その切断面は焼け爛れた痕が残っており、端的に言ってグロテスクだ。
 ニールは呼吸を整え、何かに集中するような素振りを見せる。
 俺は黙ってニールを見ていると、俺が手にしていた箒が何かに引っ張られた。
 思わず箒を手放すと、箒は宙を踊りながらニールの手元、というより失った片腕の前で止まった。まるでそこに見えない腕があるかのように。


「片腕を失ったおかげで冒険者としちゃ廃業したが、片腕を失ったおかげでこんな芸当ができるようになったんだ」


 ニールは不可視の腕を操って見せた。


「これを使うと魔力もそうだが、体力を滅茶苦茶使うんで多用はできないけど、きっと何かの役に立つ。決して足手まといにはならないから、連れて行ってくれ」


「連れて行くも何も……」


「頼む!」


「俺が城に行って良いか悪いかを決めるわけじゃないし、着いてきたいなら着いてくればいいよ」


「本当か!」


「なら、その話に俺も噛ませてもらえませんかね。旦那」


 突然、フィルが現れた。気配を殺されると本当に分からないな。ただでさえ、ここは薄暗いのに。


「フィルも何か企みでも?」


「旦那、人聞きが悪いですぜ。単に王族に恩を売れるチャンスなら乗っからない手はないってだけさ。そこの嬢ちゃんはクリス王女の専属のメイドだって聞いてるし、旦那は王族らの顔の覚えが良いからな。その働きに便乗したいってだけさ」


 随分と明け透けだが、分かりやすいってのはいい。


「分かった。どんな形であれ人では欲しい」


 現状、戦力となるのは俺とゲイリー達とフィル、それから実力未知のニールだ。
 魔王に挑もうとするパーティーとしては華が無いが、この際贅沢は言っていられない。


「カンザキ様、私も連れて行っては貰えないでしょうか?」


 ジェイドも食器洗いを終えたのか、こちらにやってきた。


「ジェイドはもちろん連れて行くぞ。というか、ジェイドには城までの案内を頼みたい」


「そうではなく、私も一緒に戦わせてください」


「え」


 ジェイドって戦えるのか?


「こう見えて、ロイス様に魔術の指南を受けたことがありますから、きっと役に立ちます!」


「マジか」


 あのロイスの教え子って箔が付くと少し気になってくる。人手が欲しいのは事実だし、使えるものは使うと決めたんだ。あっちから申し出てくれるなら断る理由もないか。


「分かった。ジェイドにも来てもらおう」


「ありがとうございます!」


「これだけのメンツがいるなら、きちんと作戦を決めたほうがいいな」


 俺は城に突入する面々を集め、作戦会議を開き、それは深夜まで続いた。

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