異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第261節

 宿場町を発って更に三時間。
 こちらの世界に来てから体を動かす機会は増え、体力がついたと思っていたがさすがに足がパンパンだ。
 馬を交換したゲイリー達と違い、こちらの体力は継続して消耗している。さすがに疲労も見えてきたので、ペースを落として進むことにした。
 ここまで魔獣や魔人に会わなかったことは僥倖だが、今やサニングは魔人達との交戦の真っただ中。ロト達を破ったというのであれば、かなり厳しい。一般的に籠城戦で攻め込む側、この場合は魔王群だが、は三倍の兵力が必要だとは言っても、あの魔王がいる以上は単純な数の戦いとは言えない。
 というか、ロトもそうだが、ロナルドやレオ、ロイス達がどうなったのか気がかりだ。単純に悦楽の王に負けました。死にました。ってことは無いような気がする。
 結局の所、俺が考えた所でサニングに着かなきゃ状況が分からない。
 突如、ゲイリーが手を上げて馬の勢いを殺した。


「カズキ殿、ここから先は歩いて向かいましょう」


「どうかしたのか?」


「どうやら、既にサニングは陥落したようです」


 ゲイリーが向ける視線の先には壁に囲われた都市が見える。こうやって外からサニングを見るのは初めてで、それがサニングであることをゲイリーに言われなければ実感が湧かなかっただろう。
 双眼鏡を取り出し、サニングにピントを合わせる。
 サニング周辺には魔獣や魔人がまばらに居り、城門は開かれている。


「城門が開いてるな……」


「籠城に失敗したということでしょう。湖の国や森の国、山の国の援軍が来る暇もなかったようですね」


「やっぱり援軍とか頼んでたのか」


「少なくとも私ならそうするでしょう」


 ゲイリーは馬から降り、他の面々もゲイリーにならう。
 俺も自転車から降り、IGで現代に返す。


「この後の作戦は」


 ゲイリーから馬を降りると言った提案が合った以上、何か策があるとみて聞いた。


「こういった時のために秘密の通路、各地方貴族専用の裏口があります。そこから忍び込みましょう」


 ゲイリーが次に視線を向けたのはサニングを通る川だ。湖の国から流れ、陽の国に生活用水として使われる水。


「あの川がサニングに入る所は鉄格子によって頑丈に守られています。ですが、川底に色違いの石のブロックがあり、その色違いのブロックから左へ三つ目のブロックを思いっきり押し込むと一部の川底が低くなり、人が通れる程度の隙間ができます。そこから侵入しましょう」


「そんな仕掛けがあるのか」


「ええ。こういった時に地方貴族の援軍を呼び寄せるためにと賢王が仕掛けた細工です」


「でも、本来ならそれって貴族が知ってる情報だろ? なんでゲイリーが知ってるのさ」


「私はオークス様に使える騎士。こういった時のためにとオークス様がご存知の秘密通路の一つを教えていただいておりました」


「そんな情報、有事でもない時に部下に教えてていいのかな?」


 そのオークスという人物は口が軽いって事にならないだろうか。


「それだけ私が信頼して頂けているという事でしょう。確かに、オークス様は人によっては少々変わった方と称される人物ではありますが、それは先見性に優れた人物であるからです」


「まぁ今回はそれに便乗するんだ。ありがたいことには変わらないか」


「そういうことです。まずは川上に移動しましょう。そこから川に沿って移動し、魔族達の目を盗み、中に入りましょう」


「よし、いくか」

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