異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第260節

 自転車と数頭の馬が道を走り抜ける。
 初めは悪路面で軽すぎる車体が跳ね回ったが、今は俺の体重を加重することで制御している。軽すぎれば自転車が跳ね、重すぎれば俺が疲れる。その塩梅を気にしながらだが、今のところ調子はいい。


「カズキ殿、そろそろ宿場町に差し掛かります! そこで馬を交換しましょう!」


「分かった!」


 普段から運動しない俺だが、既に二時間はペダルを回し続けている。負荷も軽く、悪路とはいえ平坦のため、ちょっと長いサイクリングぐらいの気分だが、ちょうど休憩したい気分だった。なにより、息が上がっているから整えたい。
 ゲイリーが進言してから十分もしないうちに町と呼ぶに相応しい程度に栄えた町にたどり着く。秀でて大きな建物がないが、建物の数は少なくなく、それなりに人口があるっぽい。
 俺は町の入り口で待機し、他の面々は馬を交換しに向かう。
 スポーツドリンクで非常時の携帯栄養食を流し込み、腹を落ち着ける。


「カズキ殿、このままサニングに向かいどういたしましょうか」


 ゲイリーは馬を部下に任せ、俺の隣で自分用に携帯した食料を口にしている。


「とりあえず、サニングの中に入りたいけど……魔獣やら魔人がいる可能性が高いだろうな」


「ならば、我々がそれを引き受けましょう」


「ゲイリー達が?」


「ええ。ここしばらくは魔獣退治ばかりで体が鈍っていましたからな。我らが揃っていれば並の魔人ならば十体程度を相手にしても問題ないでしょう」


「それなら助かる」


 最悪、リスクを負ってでも外壁を登って中に入らなきゃいけないだろうと思っていた所だから本当に助かる。


「ところで、こうやって落ち着いて話す時間もありませんでしたが、今までサニングでどういった活動をなっさっておりましたかな?」


「まぁ色々あったんだけどさ」


 俺は掻い摘んでリコとの出会いからオルコット商会との取引、クリスと出会って双子のメイドを預かったことや、ロトから取引を持ち掛けられ女戦士の奴隷を受け取ったり、武闘大会に出ては三回戦敗退をした話、それから魔人が現れた話や宣戦布告を受けた話、それから戦争への流れといったドラマチックな出来事を淡々と話した。


「随分と多くの経験をなさったようですね」


「まぁ本当に色々とね。その中に魔王を討伐するなんて話まで入ってくるんだから、よっぽどだろう」


「違いないです」


 話が終わったところでゲイリーの部下が新たな馬を連れてやってくる。彼らは彼らで食事をしてきたらしい。それならゲイリーも食事をしてくればいいのに。俺と他愛ない話でもしたかったのか。


「じゃあ、そろそろ向かおうか」


 まだ足が熱を持っているが、だからといって休むわけにはいかない。

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