異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第257節

 森の中でアニーを探すため、リハビリがてら木々の枝の上を跳ねて渡る。体が少し痛むが、運動上大きな障害ではない。
 森に入って五分もすれば少し開けた場所で草花が群生している一画で座り込んでいる少女を見つけた。
 驚かせないように木から降りる。


「アニー」


 俺の声にアニーが振り返る。


「カズキさん!」


 アニーは薬草を入れていた編籠を落として俺に走り寄ってきた。


「久しぶり」


「お久しぶりです。今日はどうかしたんですか? アレ、随分とお怪我をなさっているみたいですが」


「ああ、まぁ色々とね」


 俺ははぐらかそうとしたが、アニーは聞く耳を持たなかった。


「少し待ってください!」


 アニーは薬草の入った編籠を手に取り、中から数枚の葉を取り出して清潔そうな手拭いで包み、よく揉んだ。すると葉から出た汁が手拭いを染める。


「痛み止めの薬草なんです。カズキさんがくれた薬には遠く及ばないでしょうが」


 そういってアニーは手拭いで俺の顔や腕にある傷の周辺をそっと撫でるように拭くと、少しスースーした感じがする。たぶん、民間療法的な湿布の一種なんだろう。


「ありがとう」


「どういたしまして。それにしても、どうかしたんですか? 何かまた魔獣でも出たんでしょうか?」


「んー、まぁそんなところ。色々あってこの村に来る事になったから、アニーの顔を見ておきたいと思ってね」


「そうだったんですか! わざわざありがとうございます!」


「元気そうで良かった」


「はい! これもカズキさんのおかげです!」


 アニーは妙に上機嫌で弱弱しかった面影はない。


「それにしても一人で薬草を摘むなんて危なくないか? 魔獣騒動もあったっていうのに」


「一応、ゲイリーさん達が見回ってくれたおかげで魔獣も全くでなくなったんですよ。近隣の村でも最近は魔獣が出なくなったって言ってました」


 戦争のために召集されたんだろうか?


「まぁでも、あんまり一人で森を出歩かない方がいいぞ? でも、なんでアニーが薬草を摘んでるんだ? 他の村の連中は?」


「これは私が自分でしてることなんです」


「なんか理由があるのか?」


「私、将来は薬師になろうと思ってるんです」


「薬師?」


「はい。私、カズキさんのおかげで助かって、私もカズキさんみたいに人を助けられるようになりたいって、もしお姉ちゃんが怪我や病気をしても私が治してあげられたらきっと一緒に暮らせるって思ったんです!」


 やばい、また泣きそうになる。


「いいんじゃないかな。きっとリコも喜ぶと思うよ」


 自分で声が震えているのが分かる。


「まだ薬草は摘むの?」


「いえ、今日はこれぐらいにしておきます。これ以上取ってしまうと枯れちゃうかもしれないので」


「そっか。なら、帰りは俺が一緒に行くよ」


「お願いします」


 アニーは優しくふんわりと笑った。

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