異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第255節

 真夜中。鍵は開けっ放しでカーテンも開きっぱなし。悪臭も残ったままだ。


「……最悪だ」


 いきなり出鼻を挫かれる。
 とりあえず、気分を取り戻して除菌ウェットティッシュと消臭スプレーで最低限の体裁は整え、いざサニングに向かおうとした。しかし。


「あれ? 入れない?」


 ロトから与えられた屋敷に仕掛けたIGの全てに手応えを感じる。本来ならば、手応えなくすんなり入るはずだ。
 戦争中に使っていたIGも使えない。
 馬車に仕掛けたIGも使えない。
 サニング内で仕掛けた全てのIGが使えない!


「これってどういうことだよ!」


 焦りが生じた。
 もしかして、IGが使えなくなったのか!?
 どれもこれもサニングへ繋がらない。
 今まで夢を見ていたのかと自分の正気を疑うが、クララもいるし魔宝石もある。なら、IGだってあったはずなんだ。


「カズキ、もしかしたらあっちで何かあったのかも」


「……たぶん、魔王のせいだ」


 急にこんなことになるなんてそれしか考えられない。おそらく、俺の屋敷が襲われたんだ。それで全てのIGが破壊された。つまり、既に魔王はサニングまで到着しているってことだ。


「ってことは、私達は向こうに行けないの?」


「……ああ。初めの初め、あの絵とこっちの動画が繋がった所から始まったんだ。俺が意図的に向こうとの繋がりは生み出せない」


 既にあの動画とあちらの絵が繋がっているかも確かめた。もちろん、繋がらなかった。こちらの世界のイラストが破壊されたなら、それをもう一度複製すればいい。けれど、俺がこっちにいてあっちのイラストが破壊されれば、向こうに行く手段はない。


「よーく思い出してみて! どこかにゲートはあるはずよ! でないと、二度と彼女達に会えないのよ!」


 クララもかなり慌てた声を上げている。


「……もう一回試してみる」


 戦場、馬車、屋敷、その他のサニングで仕掛けたIG全てがやはり機能しなかった。


「カズキ、他にはないの? サニングの外で設置したゲートは」


「サニングの外……」


 俺は向こうでのほとんどをサニングで過ごした。しかし、ただ一つだけ例外がある。


「あの村か!」


 俺は記憶を掘り起こし、あるアニメのアイキャッチとして扱われている扉のイラストの画像データを開く。
 息を飲み、手を突っ込んでみる。手応えの無い手応え。ゲートを通る独特の感覚。こちらとあちらの温度差、気圧差、そういった相対的な違いを肌身に感じる。


「どうやら、コンティニューはできるみたいだな」

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