異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第254節

 夕食を済ませ、痛み止めを飲み、消灯時間まで休息を取る。途中、俺の担当という医師から軽く診察を受け、日常動作に支障もなく、激しい運動さえしなければ大丈夫と言われた。
 時刻は23時。こっそりと病室を抜け、院外へと出る。
 ポケットに入っている財布はあちらの世界の通貨のためタクシーにも乗れず、徒歩で帰るはめになる。
 さすがに真夜中ともなれば肌寒く、炎の魔宝石をカイロ代わりにしながら道を進む。


「カズキ、これからどうするの?」


「そら、新しい策を仕掛けるしかないだろ」


 これだけボロボロにやられれば一矢報いたくもなる。


「それじゃあ、悦楽の王と戦うのね」


「ああ」


「でも、悦楽の王も言っていたけれど小道具を使った小手先の策じゃ効かないわよ?」


 悦楽の王も言っていた。主演が小道具に頼ってはダメだと。


「だったら大道具を使うまでさ」


 今はまだ思いついていないが、必ず策はあるはずだ。
 武術や魔術が劣っているなら、あとは詐術や技術やそれ以外の所で戦うしかない。


「なんかこう、手っ取り早く強くなれる方法があればいいんだけどな。飲むだけで強くなれる水とか」


「そんなものがあったら、皆飲んでるわよ」


「だよなぁ」


「でも、面白い噂話なら聞いたことあるわよ」


「噂話?」


「ええ。サニングの城に宝物庫があって、その中には一級品の魔宝石が保管されているって、でもただの魔宝石じゃ魔王には通用しないけれどね」


「そっか」


 確かに王城に宝物庫があってもおかしくないし、その中に貴重な魔宝石があってもおかしくないだろう。
 そういえば、初めて王城に呼ばれたときに妙にバカでかい鉄扉があったな。随分と魔宝石やら魔石やらが散りばめられた気がするけど、あれが宝物庫か?


「クララは王城の中を知ってるのか?」


「ええ、ハンスと一緒に入ったことがあるわ」


「その時にバカでかい鉄扉を見なかったか?」


「バカでかいってどれぐらい?」


 俺はクララに俺が覚えている限りの情報を伝えた。位置や大きさ、その重厚な見た目から魔宝石で装飾された所まで。


「見てないわね。そこまで大きな扉だと忘れるわけがないわ。でもおかしいわね。そこなら私は通ったはずよ」


「クララって一度見たことは忘れないんだよな?」


「ええ。あなたと初めて会った時にあなたが何回自分の前髪に触れたか、何度私の胸元に視線を寄こしたのか、何度あの小さい奴隷と私を見比べていたのかだって覚えているわ」


「ああ、ならいいんだ」


 俺の無意識の行動すら覚えてるのかよ。


「ちょっと調べる必要があるな」


「一度、サニングに向かうのね?」


「ああ。まずはサニングだ」

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