異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第250節

「神崎さん、お預かりしていた荷物です」


 看護師さんからビニール袋に詰められた荷物を受け取る。


「それにしても、随分とたくさんアクセサリーをお持ちなんですね。これ全部本物ですか?」


 透明なビニール袋には魔石、この世界ではそのまま宝石として扱われるはずのアクセサリーがゴロゴロと入っている。一応、気を使ってかそれら一つ一つは丁寧に包まれてはいるが。


「まぁね。って、冗談です」


 俺は冗談めかしながらビニール袋の結び目を解く。


「そうでしたか。みんな本物か偽物かって騒いでたんですよ。全部本物だったらいくらぐらいするんだろーって」


 看護師さんはそういって笑ってくれた。


「まぁ一つ数千円もあれば買えますよ」


 まぁあちらの通貨を無理矢理円で換算したらの話だから嘘は言っていない。
 中身の検証をして無くなったものが特に無いことを確認する。こっそり本に手を突っ込んでIGが発動するか試したが、やはり現代同士ではIGは繋がらなかった。


「では、他の患者さんの診察もあるので失礼しますね。何かありましたらナースコールで呼んでください」


「ありがとうございます」


「カーテンは閉めておきます?」


「あー、お願いします」


 看護師さんはカーテンを閉めて部屋を出ていったのを確認してからビニール袋の中の通訳のピアスと翻訳のチョーカー、それから吸魔石とクララが宿った魔宝石を取り出す。


「クララ、聞こえるか?」


「ええ、こっちの世界で話すのは初めてね」


 現代で異世界の、それも魔人と話せるとは思っていなかった。


「事の顛末を聞きたい。俺が気絶してから今までの事を」


 確認するにはこれが一番手っ取り早い。


「そうね。じゃあ、私の能力を使うために少し魔力を貰うけどいいかしら?」


「話すだけでも魔力がいるのか?」


「そうね。話すだけでも少量の魔力を使うけれど、私の能力。『再現する語り部』を使うのにもっと多くの魔力が必要なの」


「『再現する語り部』? それがクララの固有能力なのか?」


「ええ。私は戦闘は不得手で魔術も得意じゃない代わりに、見聞きした事を忘れないし、見聞きした事を正確に他人へ伝える能力があるの。それが『再現する語り部』」


「それって何かの役に立つのか?」


「魔人が人間社会に上手く溶け込むにはどうしても知識だけじゃなく、文化や習慣を身に覚えさせなきゃいけないわ。私の能力はそれを疑似体験させることができる。何度も説明するよりも体験したほうが早いわ。それで、魔力を貰うけれどいいかしら?」


「ああ、分かった」


 吸魔石を使い、クララの魔宝石へ魔力を注ぎ込んだ。


「じゃあ、今までのことを話すわね」

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