異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第246節

 夕方。
 俺達はそれぞれ装備を整え、基地を出る。一応、レオには新たな策のため秘密裏に動くと伝えてはいる。ただし、その中身までは伝えていない。ハリソンの話から察するに、基地内に魔人がいることはほぼ確実だと考えられる。例えレオにも伝えられない。まぁ一種の意趣返しだ。
 今は丘を登り、焼け跡を踏み越え、北の平原にいる。
 西では今でも人間と魔人、両軍の衝突の音が聞こえ、それだけこちらが手薄ということだ。
 魔人には偵察や哨戒といった軍事作戦的な行動はしないのか、あまり警戒の色は見られない。こちらとしてもやりやすいと言えばやりやすいが。
 今回、トニに持ち帰らせた情報は『黒髪の異人が東の平原に再び白炎の海の仕掛けを施す』というもの。この中で重要な点は三つ。『黒髪の異人』たる俺の存在と、『白炎の海』と、『再び』という三点だ。俺のネームバリューはこの戦争を機に一躍高まっている。その要因となった白炎の海の恐ろしさは十分に魔人達にも伝わっているだろう。そこにもう一度仕掛けるという話。もう一度仕掛けるということは今は仕掛けていないという事だ。それを耳に入れれば、なんとしても止めたいと思うのが当然だろう。絶対に止めたいならば、それなりの戦力を割くと踏んではいる。その戦力が魔王である可能性はそれなりに高いと思っている。
 他の三人にも多数の魔石を持たせ、体力、魔力共に充実している。魔王が相手でも単純な力比べならば、引けは取らないだろう。ただ、魔王が持つという三つの力がどう作用するかは伝聞でしか分からない。
 こうして潜伏している俺達の目には未だ誰の姿も映らない。
 俺達四人はレオから渡されたままだった渋柿色のローブを羽織り、伏せて周囲を警戒している。


「カズキ様、本当に来るのでしょうか?」


 英気を養うためにも携帯食料と称してお菓子をそれぞれに配っている。アイリスはお菓子袋の中からお気に入りのチョコレートを口の中で溶かしながら尋ねてくる。


「来なかったら来なかった時だ。それより、二人ともちゃんと魔力の充填は済ませてるんだろうな?」


 アイリスとハリソンには長時間の光源を確保するためにいつでも光魔術が使えるよう頼んでいる。


「大丈夫です。カズキ様の指示があればいつでも動けますよ」


「ならいいんだ。フランもいつでも例の炎姫モードになれるようにしとけ」


「炎姫モード……」


 あまり言われたくないのか、フランの言葉尻が落ち込んでいる。


「まぁ実際、あれは綺麗だったよ。この戦争が終わったら、正式にロトに武闘大会の優勝賞品を貰わないとな――」


 ――誰か来た。
 

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