異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第243節

「主!」


 アイリスの悲鳴にも似た声にフランまでがやってくる。
 裸の女、組み敷く俺。どうみても暴漢だ。


「コイツ、魔人だ! 二人とも、何か縛る物を!」


「カズキ、そいつ魔術を使おうとしてる」


「クソッ!」


 声が出せないよう後ろ首に右腕を押し付けて圧迫しているが、魔術を阻害するには至ら無いようだ。
 この女の後頭部に頭突きを食らわし、無理矢理魔術阻害を講じる。


「カズキ様! これを!」


 アイリスが持ってきた縄を受け取り、身動きが取れないよう雁字搦めにする。かなり目に毒な光景だが仕方ない。
 フランに入口を見張ってもらい、この女の処遇をどうするか考える。


「クララ、こいつのこと知ってるのか?」


 俺はアイリスに気づかれぬよう小声で聞いてみた。


「この魔人はトニ。男を誘惑する者。人間の男に好かれる容姿を利用し、諜報、殺害をする者。魔人の中でも数少ないアベル人容姿の持ち主。悦楽の王の配下でもある」


「やっぱり悦楽の王の部下ってことか。目的は俺の殺害ってところか」


 トニは俺の頭突きを食らってか、かなり弱っている。焦っていたせいか、手加減をできずに後頭部に頭突きはやりすぎたかもしれない。
 このまま殺してしまえば後腐れないが、何か情報を持っているならば聞き出したい気もする。


「魔人って魔王に絶対の忠誠を誓ってるんだよな?」


「そういう訳でもありません。魔人は魔王の命令には絶対服従ですが、魔王に忠誠を誓っているものはほとんどいないでしょう」


 あれ、そうなんだ。


「現に私はこうして悦楽の王に対し、不利益な行動を取っています。魔人は魔王の命令を遂行しなければなりませんが、命令外の行動は取れます。逆に言えば、魔人が受けている命令を逆手に取ることもできます」


「例えば?」


「このトニの受けている命令が『カズキの殺害』である場合は逆手に取ることは難しいですが、『カズキを利用する』といった命令であるならば逆手に取ることは難しくはありません。例えば、『カズキに人間を裏切る行動を取らせる』という名目でトニに偽の情報を与えることもできます。この場合、『カズキを利用』した結果、偽の『情報を手に入れた』という解釈になります」


 ってことはこのトニを利用して魔王の動きをある程度、操れる可能性が出て来るってことか。


「もし、そのようにする場合はトニを解放する必要があります。そうすると再びカズキを襲う可能性はありますので注意してください」


「分かった」

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