異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第242節

 俺達が基地に戻るのとロト陣営の快進撃が始まるのは、ほぼ同じタイミングだった。ロト達は北上し、前線を上げ、魔人達を押し返しているらしい。
 俺は休憩がてら会議室を訪れ、支援隊副長に戦況を確認してみた。
 どうやら、今の所は俺達人間側が有利に働いているようで被害も魔人側より少ない。
 こちらの被害はアーサー陣営が怪我人が数百人、死者数人。ロト陣営が怪我人が一万人、死者が三千人。クリス陣営は怪我人が数人と死者ゼロ人。それに対し、魔人側は死者だけで言えば魔獣が二万匹と魔人が五千人といった具合。
 話によれば、魔人側は初めにクリス陣営を攻撃し、東側の拠点を奪った後にロト陣営を側面から強襲するといった算段だったはずが白炎の海に為す術なく、仕方なく西側のアーサー陣営に戦力を集中。しかし、一番兵士の練度が高いため切り崩すことができず後退。その間にロト陣営が正面衝突し互いに損耗。ここで大きな差を生じる要因となったのが魔人側に比べ人間側の治癒術が発達していたことらしい。
 人間と魔人の戦争の歴史を紐解けば、魔人側が勝利する場合は昼夜を問わずの激しい戦いを強いられ、前線を維持できない短期決戦の場合。それに対し、人間側が勝利する場合は前線を維持でき、安定して兵士の治療を施すことで兵士の数を減らさない所にある。この場合、前線を維持できたのは大きく分けて二つ。一つ目はアーサー陣営の兵士が手練れ揃いだった事。もう一つはクリス陣営には未知の技があるという疑心によるもの。付け加えれば、西や東に戦力を集中したにも関わらず魔獣の数を大きく減らした事が更に拍車をかけた。ロト陣営はロトの親衛隊だけを見れば練度は高いが、国軍や傭兵はそのレベルには達していない。ロト陣営の兵の練度を平均してみればかなり見劣りをする。おそらく、怪我人や死者もそういった人間だろう。まともに戦力を正面に集中されれば、ロト陣営の被害は今の比ではなかっただろう。
 現在は好機と見てロトは親衛隊を連れて自ら進軍。魔王の首元に刃を突きつけようとしている状態だ。人間と魔人との争いの中で人間が前線を押し返すといった例は過去に数える程しかない。それほどまでに好調なのだ。
 前線が上がればもちろん、アーサー陣営やクリス陣営もロト陣営の側面を守るために追従する必要がある。俺はこうして休んでいるが、レオ達は再び戦場に出るらしい。ちなみに俺は留守番だ。
 支援隊副長は仕事をこなしながらもアイリスにお茶を入れてもらう俺の話し相手になってくれてる当たり優しいな。


「それじゃあ、そろそろ戻るよ。色々と教えてくれてありがとう」


「いいんですよ。あなたはこの戦況に一番貢献した人物の一人なんだから。そのうち、クリスティーナ王女から何か褒美が出るかもしれないわね」


 支援隊副長はクスクスと笑った。とても愛嬌のある人だ。
 支援隊副長に礼を言ってから自分に割り当てられた宿舎(俺が建てた)に戻る。すると、何故か先客がいた。


「カズキ様、お戻りになられましたか」


 見ず知らずの女性。ロイスが着ていたような紺のローブを着ており、魔術師部隊の人っぽい。しかも、かなり体のラインが艶めかしい。


「えーっと、何か用かな?」


「すみません。レオ様に言われまして、その……そちらの方に席を外してもらってもよろしいでしょうか?」


 どうやらレオの遣いらしい。


「アイリス、昼飯の下準備でもしててくれ」


「分かりました」


 アイリスは調理器具の一式を持って外に出る。


「すみません。わざわざ」


「いいんだ。それより、なんだろう? 内密な話?」


 俺は話しながら椅子に座り、その女性にも椅子に座るよう促す。しかし、女性は座る事なくローブを脱ぐ。ローブの下は何も身に着けておらず、白い裸身が露になった。


「え、えーっと」


 こういう時、視線のやり場に困る。見るべきか否か。


「カズキ、この女は魔人よ」


 この場にいるもう一人の女性の声で反射的に体が動いた。加重の効果を切り、椅子を後ろに蹴飛ばす程の勢いだ。左手で女の右手首を掴んで机の上に引き倒し、足を動かせないように俺の右足を絡め、右腕で女の後ろ首にあてがって圧迫した状態で加重の効果を発揮する。


「カズキ様!?」


 椅子を蹴飛ばした時の響き渡った音でアイリスが慌ててやってきた。

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