異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第241節

「レオ、どんな作戦だったんだ?」


 きっと俺にも知らされていない作戦が裏で行われていたんだろう。それぐらいは鈍感な俺でも分かる。


「カズキ、知らせなくてすまなかった。実は――」


「フランちゃーん!!」


 紺のローブを羽織り、フードを目深に被ったロイスが闇から急に現れ、フランを背後からぎゅっと抱きしめていた。


「まぁそうだろうとは思ったけど」


 あれだけの不可思議な現象。普通に考えれば魔術によるものだ。それを実践できるこちらの陣営ともなればロイスしかいない。


「そういうことです。私達は奇襲部隊にして囮部隊。本命はこちらでした」


「俺はまんまと騙されたわけか」


 敵を騙すにはまず味方から。それを実際にやられると、釈然としない気持ちになる。


「あの時、カズキが言ったんだ。『どこに敵の耳があるか分からないから、最低限のメンバーにだけ伝える』って」


「ああ、あの時か」


 あの白炎の海を仕込んだ後にレオとロナルドにだけは伝えておいた。その時にそんなニュアンスのことを言っていたかもしれない。


「今回の策は誰が知っていたんだ?」


「私とロイスだけだ。隊長も知らない」


 味方を騙すって隊長まで含むのが怖いな。


「まぁこの作戦もー、カズキが魔石をロイスちゃん達にくれるっていうからーできたんだけどねー」


 ああ、あれがキッカケだったのか。


「あの魔術ってどんな魔術だったんだ? それとどれぐらい魔石を使ったんだ?」


 白炎の海程の広範囲ではないが、魔人数百人に対する魔術も十分凄い。


「氷は冷気を発して水になるでしょー? その性質を操って水が冷気を発して氷になる魔術を使ったのー」


 ロイスは簡単そうに言うが、エネルギー保存則とか完全に無視した魔術。それこそが裏魔術。ロイスが言っていることは熱的エネルギーのみを消滅させると言っているに等しい。


「ロイスは『裏魔術の師』と呼ばれる前はごく短い間だが、『氷結の魔女』と呼ばれた時期もある」


「なっつかしー。その呼び名、まだ覚えててくれたんだー」


 氷結の魔女か。わりと鬱陶しい性格のくせに氷結とか似合わない。もっとクールビューティーな女性に名乗って欲しい。


「でも、カズキ様も退却の時に何かしていましたよね? 何か冷たい物を感じましたけど」


 アイリスが俺を持ち上げようとしてくれている。健気で可愛い。どうせ説明しても分からないだろうけど、アイリスの頭を撫でながら説明する。


「あれは液体窒素っていって空気が液体になるほど冷やしたものなんだ。触れれば凍傷になるし、あれだけの量が気化したら、周辺の魔人は窒息するだろうな」


 なんといってもタンク一本分の液体窒素だ。気化すればその体積はとんでもないだろう。少なくともあの魔人の軍勢の半分は飲みこむだろうと考えている。


「カズキ様は火も氷も操れるのですね!」


 あれを操るって言っていいのか微妙だけどな。

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