異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第240節

 高速の離脱。俺達とロナルド達が魔人の軍勢から離れるタイミングでレオが敵の軍勢の前に立ちはだかる。
 魔人は戦術と魔術で言えば魔術を得意としており、追ってくるのは魔人というよりも魔人の放つ魔術だ。地火水風、それ以外の属性の様々な魔術がレオ達を襲う。しかし、その魔術一つ一つを躱すことなく全て切り伏せる。この薄暗い中、レオの振るう刀身は見えず、ただ放たれた魔術が掻き消えるように見えた。
 接近戦に覚えがありそうな魔人がレオに挑もうとするも、レオは後退しながら魔人の首を刎ねていく。一体どうしたらそんな戦い方ができるのか、ド素人の俺には分からない。ただただ、レオが武技を披露する度にそのわだちに魔人の骸に代わる魔石が転がり、月夜を煌びやかに反射させていた。
 圧倒的じゃないか。
 魔人にも優劣はあるのだろうが、並の魔人じゃレオの相手には役者不足だ。そして、レオが連れている部下達も揃って強い。さすがにレオみたいに迫ってくる魔人を一撃で切り伏せるほどではないが、追尾してくる魔術を切り伏せながら、魔人の相手をしている。対人スキルが俺とは違いすぎる。


 俺達を追おうとする魔人達が軍勢を離れ、数百人程が迫ってくる。これでもレオ達が数を減らした上での数だ。


「レオ! このままやつらを基地まで連れて行くのか!?」


 俺は全力疾走をしながら、息絶え絶えの中で言葉を紡いだ。


「あともう少しだ!」


 魔人達の怒号の中でも聞き取れる程の大声をレオが上げた。
 もう少し、もう少しってことは何か考えがあるのか?
 俺達が草原の焼け跡を疾走する度に地面がパリパリと音を立てる。どうやら、例の白炎の海のせいで土がガラス状に変質しているらしい。
 その時、ふと視界の隅で見知った顔の女性が何かの祈りを捧げていた。


「カ、カズキ様ッ!」


 俺がその女性を確認しようと振り向こうとしたとき、アイリスが転んだ。それを咄嗟に受け止め、とにかく今は逃げるべきだとアイリスをお姫様抱っこをして駆け抜ける。


「舌を噛むから喋るなよ」


 俺の走り方はかなり乱暴だ。気分が悪くなっても我慢しろ。


 丘の手前まで退却すると魔人達の怒号が随分と遠くになったのに気が付いた。
 振り向くと周囲には霜が降り、足元がひんやりとした冷気を感じる。遠くには魔人の軍勢の影形はあるものの、微動だにしていない。まるで石像のようだ。


「どうやら作戦成功のようですね」

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